陽だまりの詩 8-8
「お…お父さん」
「…あなた」
この人が奏のお父さんか。
俺と変わらないんじゃないかってくらい若く見える。
「初めまして、天道春陽と申します」
俺はお母さんのときと同じように頭を下げる。
だが、予想外の事態が起きた。
「…お前が奏をたぶらかしている男か」
「は、はい?」
「いい年してるじゃねえか…なんのつもりだ?」
「…なんのつもり、と申されましても」
奏が好きだからという理由しか俺にはないのだから。
「小僧、お前はなめてるのか?」
「はい?」
俺が顔を上げたときには、目の前には拳が迫っていた。
「!」
バキ、と骨の音が聞こえた。
脳がグラングラン揺れる。
奏の父親だから、暖かくて優しい。
そう考えていた俺は甘かったのか。
朦朧とする意識の中で、俺はそんなことを考えていた。
遠くのほうで声が聞こえる。
「お父さん!!!」
「うるせえ!俺はあの小僧を試してんだよ!」
意識はそこで途切れた。