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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 8-7

***

和やかな時間はあっという間に過ぎた。
夕暮れになると本格的に寒くなるから、まだ日が高いうちに病院に帰り着いた。

「そうぶすくれるな」
「だって、寒いのくらい平気です」
奏はやはり、帰りたくなかったらしい。
眉をひそめて俯いている。
「……まあ、いつでも連れて行ってやるから、な?」
すると奏はふんわりと笑う。
「そう言ってもらえると思ってました。約束ですからね」
「お前…俺の扱いを完全にマスターしたな」
引きつる俺を余所に、奏は笑う。
「一生、お尻に敷かせて頂きます」
「……」

奏は本当に可愛い。


しかしこの和やかな雰囲気は、突如破壊される。

俺達が奏の病室に帰り着いたときのことだった。


扉を開けると、奏そっくりの女性が立っていた。
すぐに母親だと気付いた。
「お母さん」
「奏、お帰りなさい」
笑顔はもっと似ていた。
「ただいま。あ、この方が春陽さん」
「初めまして。天道春陽です」
お母さんと目があったので頭を下げる。
「あら、話に聞いてるよりイケメンじゃない」
「え?」
「お母さん!」

どこまで話してるんだ奏!
さすがに付き合う話までしてるとまずいぞ。

「春陽さん、すいません」
「いや」
すると突然、奏のお母さんは頭を下げた。
「いつもありがとうございます。天道さんのおかげで、最近の奏はとっても明るくなりました」
「そんな…俺は…」
「身の回りのことまでお世話して頂いているみたいですし、私は本当に感謝しています」
「…」

俺はそんなすごいことをやっているわけではない。

奏が好きだから…

そばにいたいだけなんだ…


「お母さん…お父さんは…?」
奏はくぐもった声で言う。
お父さんとも初めて会うことになるのか。
やばいな、お母さんに会うだけでも内心緊張してたのに。

「まだ来ないと思うから、今のうちに」
「…うん」
なんだか変な雰囲気になってきた。
「奏?」
「春陽さん、ちょっと外に出ましょう」
「あ、ああ」
俺がお父さんと会うのがまずいのか?
俺はよくわからないまま、奏に促されて病室を出ようとした。

だが…


ガラッと激しく扉を開ける音がしたかと思うと、背の高い男性が入ってきた。


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