陽だまりの詩 8-5
***
俺達は電車に乗ることにした。
切符を二人分買って、改札を通る。
エレベーターを使ってホームまで降りた。
「…面倒ですよね、すいません」
「なに言ってんだ」
しゅんと落ち込む奏の頭をべちっと叩く。
奏は頭を抑えて震えている。
やば、強すぎたか?
「悪い、もう叩くのはやめるよ」
最近、癖のようになっていたからな。
奏はゆっくりと振り返ると、涙目で言った。
「触れてもらうのはうれしいです…でも」
「…っ」
「あまり叩くと髪が無くなってしまいます!」
「…その、なんだ、すまん」
わけわからんぞ奏。
奏と電車に乗り込む。
奏自体は軽いから、なんとか一人で車椅子ごと持ち上げることができた。
「度々すいません…」
「謝ってばっかりだと楽しくなくなるぞ」
奏と出会って以来、本当に俺は学生の時のように子どもじみていた。
奏があまりに暖かく笑うから、俺も照れくさくなって顔が見れなくなる。
学生時代、忙しくて恋愛できなかった俺だから、本当にこの奏との時間は微笑ましい。
ふと窓の外を見つめた。
すごい早さで流れていく景色。
景色はビルが並ぶ市街地から段々遠ざかり、数駅も過ぎた頃には山が見えるようになってきた。
俺達の行き先は決まっていた。
奏がリクエストした場所だ。