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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 8-4

「あの…この近くにあるケーキ屋さんを探しているのですが…知りませんか?」
大人しそうな女性は、しゃがんで奏と同じ目線になると、優しい声で尋ねてきた。
「あ…」
奏は多少、動揺したが、俺が頭をポンと叩くと、笑顔で答えた。
「この歩道を渡ってすぐの角にあります…」
「ありがとう」
女性は笑顔でそう言うと、旦那さんに声をかけた。
「瞬、こっちだって」
瞬と呼ばれた男性は、慌てて走り出した奥さんに声をかける。
「待て悦乃!子どもに響くから走るな!」
その言葉で気が付いたのだが、悦乃と呼ばれた女性のお腹には命が宿っているようだった。
別れ際、男性が言った。
「……ありがとう、お二人共、お幸せに」
そうして何事もなかったかのように二人は見えなくなった。

「奏、よくやった」
俺は再び、奏の頭を叩く。
「私だって、あれくらいできます」
奏は頬を膨らましていた。

「私達、お幸せに、って言われましたね」
「ああ」
「私達も、きっと……」
消え入りそうな声で奏は言った。
「そうだな」
俺は奏の頭を撫でて肯定した。
「えへへ…って、あまり子ども扱いしないでくださいっ」
奏は赤い顔で俺を見上げると、そう怒った。
「はっはっは」

俺達は笑いながら、再び足を進めた。


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