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愛の印〜六原恵美子〜
【その他 官能小説】

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愛の印〜六原恵美子〜-1

手良嶋カズキ(てらしまかずき)は32歳の駆け出しSM官能小説家。
師匠のアズマ類(あずまるい)の所に出入りをして2年になる。
アズマのサポートもあり小さな出版社から何冊か本も出したが、パッとしないのが今の現状。

「オマエはアレだな」
出版関係のパーティーへ行く途中のタクシーの中で、アズマはカズキにボソッとつぶやいた。
「アレって何ですか?」
「よく女優が恋愛ものの映画を撮る時に言うだろう」
「あぁ、恋愛も演技の勉強のうちだとか何とか・・・」
「そ。それが無いんだよ。オマエにはエロさとか色気が無いんだな」

確かに。カズキはあまり自分の身の回りのことは気にしない、むさ苦しい小説家と言ったイメージがピッタリの男だ。
「顔じゃないよ。色気が出りゃ自然にイイ男になるもんさ」
アズマは60を過ぎてもお盛んだった。
カズキがアズマの家を訪れる度に、どこから探してきたのか?と思うほどの女性が入れ替わり立ち替わりアズマにくっついているのだ。しかも清楚で儚げな未亡人タイプがアズマの好みらしい。
「暫く立入禁止」と書かれたドアのプレートの向こうで、清楚で儚げな女性が鞭の音とともに艶めかしい喘ぎ声を出していることがよくあった。

「まあ、誰かに本気で惚れてぇ〜口説いてぇ〜落としてみろよ」
アズマはカッカッカと笑いながらパーティー会場に入っていった。
この後は出版社の社長やらコンパニオンの女性やらがアズマの面倒を見てくれるだろう。
カズキはホッとしつつ運ばれてくるシャンパンを一口飲んだ。

「あ!手良嶋くん?」
向こうから手をパタパタと振って近づいてくる女性がいた。
「お久しぶり。アズマ先生の取材の時にお世話になりました六原です」
そういって名刺を渡した。

『フリーカメラマン 六原恵美子』

「あ〜!あの時の?」
「2年ぐらい前でしたっけ?先生のお宅にお邪魔して・・・」
「ああ、そうでした。どうもご無沙汰です」
「どう?小説の方は」
「まあ、ぼちぼちやってます」
「あ、あれからすぐ私、結婚したの」
「えっ?まさかあの・・・例の?」
「ふふっ・・・例のフランスの彼」
恵美子は雑誌の取材でアズマの家を訪れた女性だ。
昔からアズマとは仲がよいらしく、取材もいい雰囲気で進んでいた記憶がある。
(確か、俺よりも6つ年上だって言ってたっけ?)
それなのに全く年齢を感じさせない。切れ長の目にスッと通った鼻。スレンダーだが胸は結構大きい。

カズキは恵美子を見ながら2年前の事を思い出していた。

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