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桜が咲く頃
【ファンタジー 恋愛小説】

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桜が咲く頃〜不安〜-2

話を戻して、鈴は少し怒っていた。

『どうした?鈴。
なんか元気ないな』

矮助は、鈴の前に膳を置き、鈴の向かい側に座る。
いただきますと言うと、夕食を食べはじめた。

『お前、今日どこに行っていた?』
『ムゴホォッ!?』
鈴のその質問が、なんだか、妻が夫を詰問しているような言い方だったので、矮助は思わずむせてしまった。

矮助は一度お茶を飲み
『はへぇ!?』
間抜けな声を出してしまった。

『お前、今日仕事で出かけただろう』

『ぁ?…ああ…』
鈴の質問の意図がわからず戸惑う矮助。

鈴が怒っている理由もわからず、矮助は困り果ててしまう。

『あの、鈴…何を怒って…』
恐る恐る尋ねる矮助に、鈴は両手で畳を叩き
『仕事で、出かけたんだろ!?』
更に語気を荒げる。
『で、出かけました!』
鈴の剣幕に押される矮助。

(鈴と結婚したら、こうやって尻に敷かれるのかな?)
等と淡い妄想をしてみても、現実は何も変わらず、鈴は恐い顔をして矮助を見つめていた。

『あの…それが…?』
矮助がそぉっと尋ねてみると、鈴は苦しそうな顔をし、膳の前に小さくなって座った。

『鈴?』
矮助は鈴の側にそっと座る。

『何故…何故俺を連れて行かない…』
絞り出すように、鈴は言った。

『え?』

『俺はお前の護衛だろ!?
何故仕事で出かけるときに護衛の俺を連れて行かない!?
今日だけじゃない。
いつもそうだ!
そんなに、そんなに俺が頼りないか!?』
語尾が震え、鈴は矮助にそっぽを向く。

『そんなことないよ』
矮助は優しく鈴の頭を撫でる。

『鈴が剣術強いの知ってるし、俺の専属の護衛は鈴だけだよ。
いつも鈴と仕事で出かけないのは、俺は今誰からも狙われてないし、俺自身、それなりに強いんだぞ』
いたずらっ子のように笑う矮助。
更に続けて
『それに、いざってときには鈴にもついて来てもらうさ。
そのときは期待してるよ』
そう言って矮助はにっこり笑った。

『さっ食べよ、食べよ』
矮助は自分の席に戻り、食事を続ける。

鈴が前を向けば、そこには矮助の優しい笑顔があった――


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