冷たい情愛Die Sekunde-2-9
私は無理やり、彼に頼み込み…母親と彼と私の三人で昼食をと約束をした。
電車で銀座まで移動する。
彼はそわそわしているらしく、やたらと動作が目立つ。
腕組みをしたかと思えば、額を指でなぞったりする。
「私をお母さんに会わせるの、緊張する?」
私は彼に訊ねた。
「そりゃ緊張するよ。付き合ってる人を母親に会わせるなんて初めてだから」
「そうなの?」
「…まともな関係だった女性がいなかった…というのが正しいかもしれないけど」
恋人の私としては、少し引っかかる内容だ。
彼は、もしかしたら…若い頃は遊んでばかりだったのかもしれない。
「紘子さ…」
「なに?」
「昨日…俺のアルバム、見た?」
私は心臓が止まるかと思った。私が手にしたあのアルバム…開くことのなかったそれ。
なんと答えれば良いのだろう…。
いや…正直に答えよう…。
私は、転んだ矢先にアルバムを見つけたことと、でも中身は見なかったことを正直に話した。
「すっごく見たかったけど、いつか見せてくれると思って」
私は力をこめて言った。その姿を見て、彼は笑っている。