冷たい情愛Die Sekunde-2-7
私は、大人気ない位あっさりと理性に負けてしまった。
通話ボタンを押す。
携帯を耳元に当てる。
『もしもし?芳?』下の名前で呼んでいる。
親しい関係…ということ?
『もしもし?聞いてるの?』
私は、勿論その言葉に答えることは出来ない。
『もう、帰ってこないから心配してるのよ、お母さんだって!』
私は驚いた。電話の相手は、彼の母親だったのだ。
苗字が同じなら気付いただろう。
しかし表示がそうでなかったの私はてっきり、彼にもう1人女性がいるのかと勘違いしてしまったのだ。
「あ…あの…」
『あら?ごめんなさい、私掛け間違えたかしら』
母親は、少し慌ててそう言った。
「いえ、違うんです。遠藤さんの電話です…勝手に出てしまってすみません」
『あ…そうだったのね。こちらこそごめんなさい。1人で喋ってしまって』
話し声に気付いたのか、遠藤くんが目を覚ました。
自分の携帯で話す私を見て、少し驚いた顔をした。
でも決して、責めるような顔ではなくて…少し心配するような顔。
声を出さず口の動きだけで「どうした?」と私に訴える。
「あ、今本人に代わりますね」
私は慌てて、携帯を彼に渡した。