知らないところ-2
「はい、どうぞ」
「………はぁ」
呪いの手紙か?
手が伸びない。
「どうしたんですか?」
不審な自分に怪訝な顔をしている。
「いえ、あの」
「はい」
白石先生は、僕の手を取って、強制的に渡した。
「……どうも」
仕方なく、受け取った。
「男の子で手紙って珍しいですね!先生って本当に男女問わず人気ありますね」
と頭に花を咲かせ、ほっこり返してきた。
ん、何か癒されるな。
って今は違うか。
「……手紙……か」
何の変哲もない手紙をじっくり観察する。
宛先が違うと、こうも違うものか。
なかなか開ける気になれない。
彼女に話してから開けるべきか……。
でも、自分宛なわけだし。
彼女には言いたくないことが書いてあるかもしれないしな。
よし、開けるか。
ハサミで一気に封切った。
中には普通の便箋。
よし、読むか。
この時まで、自分は何て呑気な人間だと気づきもしなかった。
これが運命を変えるなんて思いもしなかった。
何も知らなかった。
「皆木先生?大丈夫ですか?」
読み終わり、手紙がひらひら地面に落ちた。
力が抜けた。
何年分の力が抜けたんだろう。
白石先生は、落とした手紙を拾ってくれた。
「ありがとうございます」
「あの、先生?」
心配そうに見つめる白石先生。
何とか笑ってみせる。
「ん、大丈夫ですよ」
「…そうですか。あ、祐介くん、何ですって?元気に頑張ってますって……」
ポツリとそのおめでたいはずの二文字を重く言う。
「結婚」
「えっ?」
「結婚するんですっと……柳川まどかと」
手紙にはできちゃった結婚と書かれていたが、あえて言わなかった。
白石先生は大きな目を更に見開き、驚き、いきなり立ち上がった。