可愛い後輩-2
けれど、そんな私の気持ちとは裏腹に、総太は毎日私に近付いてきた。
「幸せんぱーい」
私は彼から逃げる。それでも彼はまた翌日にはやって来る。
あぁ、どうしようか…。
「なぁ、お前の後輩って宇佐美総太って奴?」
学校帰りに夕飯を食べに来たナオが言う。
「うん、そうだけど?」
「そいつ、俺のクラス。明るいし、友達多いし、お前と正反対」
「…うるさいな」
「今日、友達と会話してるの聞いちゃってさ、お前のこと『優しくていい先輩』って言ってたぜ」
「ふーん」
「でもな、案外へこんでるみたいだから、ちゃんと話してやれよ。向こうだって何で避けられてるか分からないんだから」
ナオはあたしに箸の先を向けてそう言った。
「うん…。分かった…」
正直、私も一種の罪悪感は感じていた。
誰かに意味もなく避けられる気持ちは痛いほど分かる。それなのに、それを私はやってしまっていたのだ。
「じゃあ、明日、ちゃんと話してみる…」
「おぉ、そうしろ」
ナオは笑って私の頭をくしゃくしゃとなでた。
──翌日。
「せんぱーい!」
また総太はやって来た。
だけど私はもう逃げない。
「あれっ?今日は先輩、逃げないんだ」
そう言って笑った彼を見て、また胸が痛んだ。
「うん…。今までゴメンね、無視しちゃってて…」
「いえ、俺、全然気にしてないんで!」
彼は手を振って否定する。
無理してるんだろうな。
「総太、あのね…」
そう言いかけたとき、後ろから咳払いが聞こえた。