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かつて純子かく語りき
【学園物 官能小説】

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かつて純子かく語りき-1

私の名前は村井純子。大学2年生。専攻は日本文学。背は高いが胸は低い。自慢は、真っ直ぐなロングヘア。…オトコと間違われないように、だ。今日もデニムに白シャツで学食に向かい疾駆する。大スキな親子丼が待ってるのだ!
嗚呼。このトロトロ玉子と地鶏のハーモニー。炊きたてご飯と一緒に頬張る。ああ、ンマいっ!
「隣、いいですか?」
今まさに至福の時を過ごしているというに。邪魔するでないッ!席など何処ぞでも空いているだろうに。
一喝してやろうと顔を上げると、ソコには銀縁眼鏡をかけた物腰のヤワソーな青年がいた。
う。私はこんな弱ソーなオトコが苦手だ。強く言えなくなってしまう。
「……ドゾ。」
「ありがとう。」
彼はにこっと笑って席についた。ご飯に味噌汁にサバの味噌煮。…なんて質素なんだ。
「…何か?」
「あっ?いや。な、何でもナイっ。」
親子丼をかっこむ。
「そんな一気に食べたらお腹壊しますよ?」
抗議しようと、どんぶりから口を離さずに奴を見る。
目が合う。
目が合う。
目が合う。
「だーーっ!オマエはナンなんだっ。席はいずれも空いているだろっ?ナゼに、わざわざ私の隣に座るんだっ。」
ぜえぜえぜえ。
ヤツを睨みつける。
にこにこにこ。
「僕は滝田学。同じゼミなんですが、見覚えはありませんか?」
「…タキタマナブ?」
タキタはこくんと頷く。そういや居たような。いや、居なかったような。ムムと唸っていると、タキタは銀縁眼鏡を黒縁に取り換え、髪を後ろに撫でつけた。
「あっ!!」
居た!マジメ君だ。
「思い出してくれましたか。」
ぐいと撫でつけていた手を離す。髪がふわりと元に戻る。いかにも柔らかそうだ。
「オマエ、こっちのがイーのに。なんで真面目ブルんだ?」
マジメ君は、サバを一切れとご飯を口に入れ、ちゃあんと30回噛んでから飲み込んだ。
「色々、楽なんですよ。こっちの方が。」
「ふぅ…ん。」
お茶を啜る。私も食べるとしよう。親子丼をもう一口。ああ、堪らん……。ん?
「あ、ちょっと待て。オマエは私の質問に答えていないゾ。」
タキタは口をもぐもぐさせたまま、不思議そうな顔をする。
「ナゼ私の隣りに座るんだよっ。」
「ああ。……そりゃ、村井さんにお近づきになりたかったからで。」
へ?
「近づいてるぞ?」
「……物理的にじゃなくって。」
タキタは呆れたようにため息を吐く。
「何だ?」
「本当に日本文学を専攻しているとは思えませんよ…。鈍感ですね。」
「!」
今のはわかったぞ。
「…マジメ君は嫌味を言いに来たのか。」
それならば、コッチもその気で対応させてもらおうじゃないか。ふん。
「違いますよ。」
眼鏡の奥の瞳が、三日月のように細く笑う。その次の言葉を、私は聞き逃せなかった。
「村井さん。僕、あなたが好きなんです。」
えーーーーーっ!!?
ぼぼぼぼぼぼぼぼぼ。
顔がどんどん紅くなるのが分かる。
「オ、……マエっ?」
「何でしょう。」
アイツはもう食事に戻っている。何でコイツはこんなに冷静なんだっ?
久々にフル回転中の私のアタマが、同じ言葉ばかりをぐるぐるぐるぐる再生する。
『好きなんです。』
『好きなんです。』
『好きなんです。』
もォ、ダメ………。急に視界が暗転する。
「村井さんっ!?」
遠くでアイツの声が聞こえた。
あー……、親子丼食べ損ねたよお………。

これは、夢だろうか。たくさんの玉子と、かわいいニワトリがぴょこぴょこ私の周りを飛び回っている。あ、親子丼!
「……待て、私の親子丼ーっっ!!」
ぱち。
……あれ?ここは。ドコ?何度か瞬きを繰り返した後、状況を把握しようと試みた。四方を見渡す。白と黒でまとめられた、余計なモノが何もない部屋。こんな部屋、知らない……。
「村井さん…。そんなに親子丼食べたかったんですか?」
「うわああっ!!」
トッサに布団を頭の上までかぶる。どうしてマジメ君が!ふかふかお布団から、お日様のイイ香りがした。それで落ち着きを取り戻す。私、学食からどうやって…?
「急に気を失うから、ビックリしましたよ。」
そうか…、私としたことが失神してしまったのか。いや、だって。あんなにノーミソを使ったのは大学受験以来だったモンな。うん。
そろそろと布団から顔を出す。
「落ち着きましたか。すみません、驚かすつもりは無かったんです。」


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