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きらいなところ
【大人 恋愛小説】

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好きなところ-2

「……よく四人であちこち行ったりしたよね」
たったその一言が重く感じる。
灯は私の顔をジッと見る。そして、冷たい声で言う。店内の温度が一・二度くらい下がりそうな冷たさで。
「……祐介、あれから何か言ってきた?」
私が首を振ると隠しきれなかった怒りは最頂点に達したみたいだ。
今にも立ち上がりそうだ。
「一回、いや何十回でも殴ってやりたい!ダメ?殴っちゃ」
「灯、それは……」
何で殴っちゃいけないのか、法律とかそんなんじゃなくて……。
灯の綺麗な指を汚したくなかったから。
「瑞希は優しすぎるよ、私が瑞希だったら……何してたかわからない」
周りはチラチラと私達を見ている人もいたし、店員さんは気を利かしてなのかメニューを取りにこない。
 だけど……。
興奮して肩で息をしていた灯。私はそれが自分のためだと思うと嬉しくて、嬉しくて涙が出てきた。
「……ありがとう。でも、灯にそんなことさせられない。実際忘れてきてるよ、祐介のことは」
「本当?」
「うん」
何だと灯は大らかに笑う。
「なら、いい。あは、久しぶりだ。こんな興奮したの」
「灯……」
乱れた黒髪を手ぐしで直しながら、灯は遠い目で喋り出す。
「今は、会社ではね、大人しめなOLで通ってるんだ。笑っちゃうよね」
それが灯らしくない今の格好の答えだと思った。
「灯……」
「てか、まだ注文してなかったよね!瑞希決まった?……すいませんー」
空いてきた店内に灯の低めの声はよく響いた。

「瑞希、新しい恋、見つかったでしょ」
甘酸っぱいベリーベリーパフェを一口食べ、一瞬だけの儚い幸せに浸り、もう一口それを求めるかのように食べたが、その言葉にむせてしまった。
何で、わかるんだろう。
私のわかりやすい反応に灯が過剰に反応した。
「まさか、もう付き合ってるとか?」
「ないない。片思い」
認めてしまった。灯じゃなくて、自分で認めてしまった。好きだということを。
ずっと自分でもごまかしてきたのに。
もちろん、灯は先生と私のことは知らない。
「あ、そうなんだ。へぇ、どんな人なんだろ。今度その話聞かせて」
言える日がくるといいな。
どんな反応するかな。
「うん、でも話し始めたら一晩かかるよ?」
今度はカフェオレを飲んでいた灯がむせてしまった。

「昔ね、私親友って言葉苦手だったの」
カフェを出て、外の寒さを肌で感じた。突然の話だったが灯はすぐに頷いてくれた。
「わかる気がする。友達と親友の違いって結局なんなんだろうね。私達、親友だよねって確かめ合うのも性にあわないし」
「私、灯のこと親友だって思っていい?何か聞くのも変だけど」
子供じみた私の言葉に灯は顔だけで微笑むように笑ってくれた。
そして、私の肩を優しく叩いた。
「思うも何も、私はずっとそう思ってたけど?」
会わなければ、なくなってしまったかもしれない。そんな友情は優しく私を包み込んでくれた。

‘また会おうね’
と手をお互いが見えなくなるまで振り、駅で別れた。

灯と最初に教室で出会った時、何でかわからない。指が気になった。
「綺麗な指」
だから、そう話しかけた。

今思えば、変なの、って恥ずかしくなる。
でも、それが出会いのきっかけなら運命感じない?

自分はこの短くて骨太な指が嫌い。

何でも、しっかり掴めない気がする。

この気持ちに気づいてしまった今、自分がどうすればいいのか、ますますわからなくなった。


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