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きらいなところ
【大人 恋愛小説】

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好きなところ-1

帰り道、しっかりしなきゃと自分に言い聞かせながら歩いていた。
そうでもしなきゃ、自分の下に常にある底なしの穴に落ちてしまいそう。
 ショーウインドーでみた自分の顔、今日のため学生時代はしなかったメイクもしたけど、浮いて見える。
いつも大学に行くときしてるメイクと同じはずなのに。
「あれ、瑞希」
振り返ると高校時代の友達の灯がやっぱりと手を振っていた。会うのは何ヶ月ぶりかな?
毎日、メールはしてるけど。
でも、声だけじゃ誰かわからなかった。
 
 OLをしている灯はジャケットにヒラヒラリボン付きスカートを履いていた。
性格がサバサバして男っぽい彼女には、らしくない格好。
でも、顔をみたら、濃い化粧の中にも変わらない何かに安心した。
「久しぶり」
「本当、久しぶりだね、元気?」
「………」
答えられない私の顔を見て、灯は一瞬目を伏せた。
「て、元気でいられるわけないか」
灯はあの事を知っている。
先生は知らない事実……を。
灯は腕時計を見た。
「今時間ある?」
「うん、大丈夫」
時刻は、七時。後は家に帰るだけ、今更門限があるわけでもない。
灯は明るい声でやったと喜んでくれた。
「じゃあ、お茶おごるよ。それと、ちょっと話そ」
「……うん」
やっと吐き出せる。灯はただの友達じゃなく親友だった。昔は親友て言うのが怖かった。
 少し話しながら、歩き始める。駅がすぐそばの何の変哲もない通りは時間帯のせいなのか、元々こうなのか寂しい。
 しばらく歩くとショッピングモールに近くなってきた。
 灯が指さした。
「そこのカフェでいい?何か新しくできて美味しいって評判みたい」
「うん」
ここは入れ替わりが激しくて、前はファーストフードがあった気がすると灯は付け足した。
 白を基調にしたおしゃれなカフェは都会でも田舎でもないこの場所では私みたいに浮いてみえる。
「いらっしゃいませ」
空いてる窓側の一番奥に案内された。
店内は時間帯もあって会社帰りのOLが多かった。皆一人の時間を楽しんでるように見える。
そこだけ時間の流れがゆっくり流れているみたいに。
 コーヒーの苦い香りはせず、甘いスイーツの幸福の香りがした。
「お腹すいた、私何か食べようかな。瑞希は?」
「食べる、食べる」
お腹と相談もせず返事した。
さっき食べたばかりなのに、糖分が欲しい。
「あは、瑞希って本当に甘いモノ好きだよね」
「うん、大好き。灯も好きでしょ?」
「もちろん。そういえば、高校の時、よく帰り食べに行ったね。それであちこちのファミレスのデザートメニュー制覇しちゃってさ」
ついこの間のような話のに、自分の中でも、すっかり懐かしい思い出になってるんだな。
「で、その後はカフェ巡りして……」
「瑞希は、店員さんに告白されてね……亮くん元気?」
灯は(電話なんかでは)いつも亮くんの話をすると口調は嫌がってるみたいだけど、本当は大好きでしかたないようだ。
「相変わらず。瑞希にも会いたがってたよ?」
「本当?会いたいな」
あの頃を思い出す。本当は楽しい思い出なのに、結末のせいで思い出すのが今までつらかった。


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