陽だまりの詩 5-8
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ふう、息をつく。
ここまで長い昔話を、淡々と語ったのは久しぶりだ。
最後に誰かに話したのはいつだろうか。
思い出せない。
それだけずっと心の奥底に仕舞っていた俺達兄妹の過去。
奏は嫌な気分にならなかっただろうか。
ちらりと奏を見やる。
予想通り、奏は涙していた。
「春陽さんと美沙ちゃんは…過去にそんな悲しいことを背負って今まで生活していたんですね…」
ずずっ、と鼻をすすっている奏。
俺達のために泣いてくれる奏。
暖かい奏。
俺にとって大切な奏。
「っ…ぐっ…」
俺は泣いてしまった。
いい年してここまで号泣するとは…
恥ずかしいから顔を腕で隠して嗚咽を漏らす。
「春陽さん、涙を抑えこむことなんてしなくていいんですよ」
奏は泣きながら俺の頭を撫でてくれる。
その暖かい手で。
「うっ…ぐ…あぁ…」
俺はかなりの時間、それこそ時間を忘れるまで泣き続けた。