陽だまりの詩 5-2
「ああ、あの人は俺の知人だから、気にしなくていいぞ」
「知人なのに挨拶しなくていいんですか?」
「いいんだ」
相変わらず母さんは複雑そうな顔で俺たちを見ている。
早くどこかに行ってくれ…
俺は目を閉じてこの幸せな時間を壊されないようにと祈る。
「あの!春陽さんに何かようですか!?」
「…奏」
そうだ、こいつはそういうのを放っておくような性格ではなかった。
母さんはそわそわしながらこちらへ歩いてきた。
「……」
「春陽」
「なんだよ」
「美沙のことで話があるの」
「……わかった」
奏の目の前で罵倒を浴びせるのには抵抗があった。
それにしても…あんたはいつもここに来ては美沙、美沙って…本来ならとても俺達に顔向けなんてできないはずだろうが。
きゅっ
「…奏?」
「……」
固く握っていた拳を奏の手が包む。
いつか一緒に浴びた陽の光のように温かい。
「奏、そういうことだから、また後でな」
「…はい」
奏はニコッと笑ってくれた。