『クロノス』-プロローグ--3
ゴォォォンッッッ!!!
凄まじい轟音をたてて、鉄骨は地面に落下した。その下敷きになるはずの2人はそこにはおらず、10メートル程離れた場所に2人して尻餅をつくその姿があった。
助かった。
よかった。母も自分も生きている。
助かった。
横を見ると、何が起きたか理解出来ずにいる母が呆然と佇んでいる。
そんな母の横顔を見て安心した瞬間、激しい疲労と吐き気、脱力感が宗を襲った。そのまま視界が白くなり、意識が遠くなるー…
覚えているのは
突然倒れた息子にすがりつき名前を呼ぶ母と…
どうしようもない脱力感
そして
『自分はなにかの力に目覚めた』という、すでに知っているような知識にも似た確信であった。
この時は思わなかった。
この力が己を異世界に導き、その人生を数奇なものに変えるなんて…
逢葉 宗
『その力』に目覚めた
10歳の春であった。
つづく