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「命の尊厳」
【ホラー その他小説】

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「命の尊厳」後編-6

ー午後ー


「…これですね」

高橋が操作する端末のディスプレイに、勅使河原信也の顔が映し出された。

公安が持つ運転免許証取得者の
データベース。

となりに座る桜井は、ディスプレイと似顔絵を交互に見比べる。

「確かに良く似てるな」

「ええ。写真は約1年前で、髪型など違いますが…」

桜井は改めて由貴の記憶力と、谷口恵の腕前に感服した。

「高橋。画像をコピーして、似顔絵の髪型に加工出来ないか?」

「私じゃ無理ですね。ですが、写真係の谷口に頼んでみますよ」

その言葉に桜井は驚く。

「なんだ?オマエと彼女は知り合いなのか」

高橋は端末を操作しながら軽く頷くと、

「実家が近所だったもので。だから小さい頃は、よく遊んでやってたんですよ」

そう言って笑顔を見せる。

捜査のきっかけとなる似顔絵を描いてくれた谷口恵が、高橋の幼なじみとは。

(世間なんて広いようで狭いものだ)

桜井はしみじみと思った。

「桜井さん。今、用件と画像データを彼女に送りましたから」

「じゃあ、次は運輸局のデータベースにアクセスして、登録車を調べてくれ」

「ハイッ!」

声を弾ませる高橋。2人は時の経つのも忘れて没頭する。
捜査はここにきて、徐々に捜索範囲を狭めて、ゴールへと向かい始めていた。





「先生……加賀谷先生!」

頬杖を付いて塞ぎ込んでいた加賀谷は、掛けられた声に気づいて慌てて振り向いた。
そこには看護師が立っていた。

「大丈夫ですか?最近、ずっと塞ぎ勝ちですが…」

心配気な看護師の問いかけに、

「ああ、すいません。ちょっと考え事してたもので」

加賀谷はそう言って作り笑顔を見せる。

「もうすぐ回診の時刻ですけど……」

「分かりました。すぐに用意しますので」

加賀谷は、席を立つと更衣室へ向かった。


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