投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「命の尊厳」
【ホラー その他小説】

「命の尊厳」の最初へ 「命の尊厳」 45 「命の尊厳」 47 「命の尊厳」の最後へ

「命の尊厳」後編-5

「突然、失礼でしょう!まるで容疑者のように。それに、3ヶ月半前のアリバイなんて即答出来るわけ無いでしょうが」

「いやあ申し訳ない。職業柄、つい訊いてしまって…」

桜井はそう弁解すると頭を下げた。そして、ガレージの方に視線を移すと、

「…ところで勅使河原さん。お宅ではオイル交換も、ご自身でやられるのですか?」

それを見た勅使河原親子の顔色が変わった。

昌信が再び声を荒げる。

「それは捜査と関係有るのですか!」

「いえ。単に伺っただけです」

「だったら、もう帰ってもらえますか?コイツや私も忙しいんですよ!」

「ああ、これは失礼しました。ご協力に、つい長居してしまって」

桜井達は、半ば追い出されるかたちで勅使河原邸を出て行った。

「何なんですか!アレは…」

高橋は憮然とした表情でクルマに乗り込んだのに対して、桜井は満足そうな表情を湛えていた。

「息子の顔を見たか」

「ええ。似顔絵に似てましたね」

「それに、あの慌て様……間違い無くあの親子だな…」

静かに語る桜井に、高橋は煽るように声を挙げる。

「だったら、捕まえましょうよ!任意ででも連れて来れば、すぐに吐きますよ」

「まてまて。オマエは短絡的でいかんな。任意なんて拒否すれば、それまでだろう。
それよりも物証を探すのが先決だ」

桜井は諭すように高橋に言うと、

「今から署に戻ってくれ。公安と運輸局のデータベースにアクセスして、息子の写真とクルマの購入履歴を調べてみよう」

桜井達を乗せたクルマは、静かに動き出すと元来た道を帰って行った。
勅使河原昌信は、息を殺してその様を見つめていた。


「命の尊厳」の最初へ 「命の尊厳」 45 「命の尊厳」 47 「命の尊厳」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前