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「命の尊厳」
【ホラー その他小説】

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「命の尊厳」後編-2

ー明朝ー


「これで、ようやく捜査らしい捜査が出来ますね!」

高橋は写真サイズに縮小された似顔絵を手に、やる気に溢れた表情で声を弾ませる。

「今までのだって捜査だぞ」

となりに座る桜井が、軽くたしなめた。

クルマの中。2人は現場周辺での聞き込みに出掛ける最中だった。
高橋は亀のように首をすくませると、

「…確かにそうですが…何の手応えも無いと虚しくなっちまって……」

真面目な眼差しで答える高橋。

「確かにそうだな」

桜井は同意するように頷いた。
だが、その顔には先日までの焦燥感は見受けられない。実に嬉しそうだ。


由貴という女の子の存在。

彼女の野上諒子の無念さを晴らそうという一念が、様々な人を動かし、自分達にまで届いた。

そして今、自分や高橋はやる気になっている。


(その想い、必ず遂げてやる)


桜井は堅い表情で高橋に言った。

「…まず勅使河原邸に向かってくれ」

その言葉に驚く高橋。

「それって、何か掴んだんですか!」

「まあな」

「何です?それ。教えて下さいよ」

渇望する高橋を桜井は制すると、

「昨夜、情報提供があってな。確認のためだ…」

そう言葉を濁した。
その情報提供者は由貴だった。夜分遅く、桜井の元に連絡が入った。

その内容に桜井は驚いた。


〈勅使河原氏は事件に関わっている〉


桜井は由貴の事を、素直で実直という印象を持っていた。それは先の似顔絵や現場調査などの協力姿勢に裏打ちされている。

その彼女がハッキリと自分に言ったのだ。絶対、何らかの感触を掴んだのだろうと桜井は思った。

だが、高橋に知らせるわけにはいかない。越境捜査の際、彼女は目撃者扱いとなっている。
それに、この間の現場調査でも体調を崩してた。彼女をこれ以上、捜査に連れ回す事は避けたかった。

桜井は秘めた想いを胸にして、現場へと向かった。


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