《glory for the light》-33
―三日後。
時の頃は、夜半。僕と百合は、以前と同じファミレスで待ち合わせをしていた。僕と百合が約束をしてからの三日間、百合は大学にこないまま、今に至る。先に到着したのは僕だった。以前と同じウェイターが注文を取り、やはり以前と同じく、僕はコーヒーを注文していた。運ばれてきたティーカップを傾けながら、ガラス越しに見る夜の街並は、雑然としているはずなのに、何処か物悲しい。街自体がそうなのではなく、僕の心がそうさせているのだろう。自信が、ないのだろうか。百合を僕に繋留させる自信が…。
尻込みする決意を鼓舞させるように、熱いコーヒーを口に含む。慣れたはずのブラックが、いつもより苦く感じた。
意味もなく、外を行き交う人々の足並みを眺めながら消閑の時を送る。携帯を見ると、丁度約束の時間だ。
僕は待ち続けるつもりだ。たとえ何時間でも、百合が来るまで。電話をするつもりはなかった。二杯目のコーヒーを注文して、それを半分飲み干した。約束の時間はすでに10分を過ぎている。僕はまた、流れ行く人の群れに目を馳せた。
百合が店に入ってきたのは、それから五分後のことだった。
彼女の顔に、三日前の笑顔はない。
(…ごめんね)
僕の前に来ると、百合は立ったまま謝辞を投げる。無理に笑みを作るが、やはり、以前の微笑ましさはない。眠れない日々が続いたのかもしれない。少しだけ影りのある顔。
(大丈夫?)
僕は尋ねる。
(うん…大丈夫。行こうか。バス、発車しちゃう)
僕は領ずいて立ち上がった。
目的地までは夜行バスで向かう。あらかじめ預金を下ろしていた僕が、百合の分まで切符を買っていた。
一定のリズムで揺れる車内。僕と百合は、重く口を閉ざし、静かに席に座っていた。
片道10時間。長い夜を越え、街に着いた頃には、昼と呼ぶには少し遅い時間だった。