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《glory for the light》
【少年/少女 恋愛小説】

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《glory for the light》-46

―夜が明けて、さらにバスは高速道路を南に走り、あの街へとたどり着く。
百合と最期に言葉を交わした、あの浜辺。
凪のように風はなく、海は穏やかだった。
僕はスニーカーを履いたまま、海の中に、一歩、二歩と足を進めた。
ジャケットの内ポケットから、今までずっと保管していたものを取り出した。
『いつかまた、この場所で逢えるといいね。ハンス気取りの少年へ、百合より』
黄色い木の葉に書かれたその文字は、もう随分と色褪せてしまったけど、僕の記憶の中では、あの時のまま、綺麗な字で、僕に別れを告げている。
僕はポケットからシャーペンを取り出し、その木の葉の裏側に、掌を下敷にして文字を書いた。
『ありがとう。そして、サヨウナラ』
木の葉を、そっと海面に浮かべた。
波に浚われ、どんどんと遠ざかって行く。
(…さようなら)
僕の想いを知っているかのように、木の葉はいつまでも沈むことなく、海面に浮かびながら、ただ距離だけを離していく。
僕はいつまでも、遠く流されていく木の葉を見つめていた。
ポケットにシャーペンをしまい、代わりに握り締めたもの。
それは、あの手紙と一緒に送られてきた、小さな箱に入っていたものだった。
水族館で買った、ガラスの亀。
つがいの亀は、離れ離れになってしまったけど、僕は信じてる。
百合が、二つの内の一つだけを返した意味を。
(たとえ体は離れても、君の想いは、ずっと側にあるから…)
百合が、何処で、どうやってその短い生涯に幕を下ろしたのかは、分からない。
だけど、今、君が何処にいるかは知ってるよ。
僕は青空を仰いだ。季節は冬だから、今夜は星空がキレイだろうな。沢山、星がありすぎて、どれが君だか、僕は分かるかな。
大丈夫。満天の星空の中、一番キレイに輝いている星が、きっと君なんだ。
僕は踵を返し、海から出ると、砂浜の上に腰を下ろした。
寒さも忘れて、夜を待つ。
やがて空が暗くなり始めると、一番星が姿を表した。
二番星…三番星…四番星…。
ひときわ強く輝く、19番目の星。僕と百合の歳と同じ数。
(あっ…見付けた)
僕は時を忘れて、いつまでも、姿を変えてもキレイな君と、遠い距離を越えて見つめ合っていたんだ。

THEEND


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