ベルガルド〜金髪の女、漆黒の男〜-3
「列が動きだした、いくぞ」
前に進むにつれて、だんだんと前方の様子が見えてきた。
木々がざわめく暗い森の中で、提灯によって照らされ、この場所だけ煌々と光が集められている。照らされた先には巨大な岩山があり、ぽっかりと大きな洞穴をこちらに向けていた。入り口の前には左右に二人の、門番と思しき男たちが立っている。
『我ら、永遠と共に』
その入り口に入っていく村人たちは、ぺこりとお辞儀して挨拶のようにその言葉を門番と交わしていた。
癪に障るけど、真似をするより他ないようだ。
「わ、我ら、永遠と共に…」
私たちもぎこちないお辞儀をしながら、洞穴の中へと入って行く。
「ちっ、気持ちわりぃ…」
舌打ちし、ぼそっとぼやくベルガルドの声が前方から聞こえた。
私も同感だ。
中に入って私達は驚愕に目を見開く。
「でか…」
小さな洞窟かと思われたが、中の空洞は想像していた以上に巨大で、アーレン国の競技場くらいの広さを有しているように思われる。
「これ、自然に出来た洞窟じゃねぇな。」
周りを見渡すと。太い鉄筋で補強されており、崩れないように設計されているようだ。
意図的に掘って作ったものなのだろうか。
ベルガルドが訝しむように目を細めている。
「ヒトだけの力でもねぇ。見てみろ。」
ベルガルドはこの洞窟のドームを支えている鉄筋のひとつを指差した。
そこには古代文字のような、解読不可能の図形が赤いインクで描かれている。
「何、これ?」
「これは魔方陣だ。もちろんヒトの力で扱えるようなシロモノじゃねぇ。」
「え!?ってことは…」
「魔族も絡んでるな。このヨンウォン教っていう教団。」
「な!!?」
『静粛に!!静粛に!!!』
ドームの内部に共鳴するように、静寂を促すアナウンスが流れた。
しん、と誰も言葉を発する者がいなくなる。
妙に、自分自身の呼吸のリズムが目立って聞こえるような気がして、どきりとした。
(何が始まるの?)
周囲でひしめきあっている村人達が一斉に前方の方へ注意を向けている。その集団の真ん中辺りにいる私は、今になって初めて、そこにステージのような岩が設置してあることに気づいた。
そこにスポットが当てられ、ステージ横にある通路のような穴から、人影が出て来た。