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ベルガルド
【ファンタジー その他小説】

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ベルガルド〜金髪の女、漆黒の男〜-2

今でこそ、元気に飛び跳ねて笑う姿がトレードマークになっているが、会ったばかりの頃では考えられなかった。
瞳に恐怖と怒りの色を張り付かせ、五感は全てに警戒し、後ろから近づいてくる者がいれば殺気立ち刃を剥く始末。
そんな彼女に穏やかな生活をさせたい。暖かい笑顔で包んであげたい。
そう思って城に劇団を呼んで喜劇を上演させたり、副団長に内緒でアーレン国のお祭りに連れて行ったりもしたが、なかなかセシルが笑うことは無かった。

そう、すごく時間がかかったと思う。

今になってやっと、やっとのことで彼女に自由が戻ったのだから。


(「なぁに…暴力で解決しようってわけじゃない。ちょっと記憶を操作させてもらうだからな。」)

私たちが襲撃された時に、男が発した言葉を思い出した。

何が目的かは知らないけど、絶対にそんなことはさせない。
確かに、セシルは忘れたいくらい辛いことを背負っているだろう。
それでも、過去を振り切って未来へ歩き出せる強さを手に入れたでしょう?

私は拳を握る。

その時ゆっくりと、列の前方の動きが止まった。

「な、何?」
ベルガルドの背中に向かって問いかけた。
「さぁな。どうやら“聖地”に着いたみたいだぜ?」
愉快そうなベルガルドとは違って、私は一気に緊張する。

(本当にバレないよね…?)

バレた瞬間にベルガルドが魔術でヒトを一掃するシーンが脳内で出来上がった。
私は青ざめ、必死でその考えを振り払う。

こいつだって流石にそこまではしない!!と、願いたい…。

「先に忠告しておくけど、やむを得ない時以外は魔力を使わないで。」

誰にも聞こえないように、声を落として忠告する。

「あ?言われなくても、元々どうしようもねぇ奴にしか使ってねぇ。」

そうじゃなくて、と私は頭を抱える。
ベルガルドが言う“どうしようもない奴”って…。大抵のヒトが当てはまるんじゃ?

「ダメよ。私の許可が無い限り、許さない。」
「何で俺がお前に許しを乞う必要がある?十数年しか生きていないお前のようなガキに従うはずないだろ。」
「なっ…!」
「俺は160歳、お前は16歳だろ?」
ふふん、と鼻で笑っている。

魔族はヒトの10倍生きると聞いてはいたものの、実際の年齢を聞いて言葉を失った。けど、このトゥーラ=アーレン、ここで怯むわけにはいかない。

「私の…いいえ、アーレン国女王の力を利用出来なくなるわよ。それでもいいの?」

ふっ、とベルガルドは八重歯を出して笑う。
「お前に力があるか?黒装束の奴らはアーレン国女王の勅使と知って、攻撃してきたんだぞ。むしろ逆効果だろう。」
「…っ!?」
返す言葉が無い。


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