陽だまりの詩 2-2
「ふぅー」
中庭で一息つく。
非常に嫌な気分だ。
目の前がグラグラ揺れる。
胃がムカムカして吐きそうだ。
「大丈夫ですか?」
「!!」
彼女が…奏ちゃんが俺の顔をのぞき込んでいる。
「……大丈夫。ちょっと目眩がしただけだから」
「そうですか」
奏ちゃんは安心したのか、にっこり笑った。
「きみはいつも突然現れるな」
「それはこっちのセリフです。もう二度も助けて頂いたんですから」
なぜか眉を吊り上げる奏ちゃん。
「そういえばそうだな」
「…それに天道さん、ずるいです」
「え?」
「この間お会いしたとき、お年をおしえてもらえませんでした」
ぶすくれたままの奏ちゃん。
「あー、そうだったな」
あの後、自然と別れてしまったのだ。
忘れていた。
「私はおしえたのに、なんだか損しました」
「ごめんな」
とは言っても…言いたくない。
『二十六だ』
『え?』
『二十六だよ』
『……そ、そうなんですか…はは』
『で、あのさ』
『このロリコン野郎』
なんだかデジャブのようなものを見た気がする。
恐ろしい。
とてもじゃないが言えない。
「あのさ、俺をいつも突然現れるヒーローだと思ってくれ」
「?」
予想に違わず、奏ちゃんはきょとんとした顔で首を傾げる。
「ヒーローの正体は不明。よってプロフィールも不明」
「……」
明らかに不満そうな顔で俺を見る奏ちゃん。
だめだ。腹括れ、俺。
「二十六だ」
「え?」
「二十六だよ」
「……そ、そうなんですか…はは」
終わった。
「大人ですね」
「へ?」
「大人の男の人ってかっこいいです」
奏ちゃんは顔を真っ赤にしている。
「…いやじゃないの?十も違うおっさんと…」
「嫌な訳ないじゃないですか」
えへへ、と微笑んだ。
「ありがとう」
「え?」
「いや、なんとなく」
「はあ」
彼女は心底暖かい。そう感じた。