「蜜の味わい」-3
「じゃあ仕事に戻るからひとりでいい子にしていろよ」
涙を浮かべながらかぶりを振る舞を残して楼主は仮眠室を後にしたのだった。
ヴヴヴゥ〜。
無機質な機械音が静寂を破り舞の体内で響き続ける。
決して強くはないその振動は舞の躯を火照らせ、苛み、じらし続ける。
どんなに懇願しても止むことはない振動。
どんなに望んでも高まることはない蠢動。
中途半端な刺激は上り詰めようとする舞を天国の一歩手前に押し留めている。
それは、ある意味、地獄にも似ていた。
痛いわけでも苦しいわけでもないが、ゆるゆるとした快楽ばかりを与え続け決して楽にはさせてくれない。
せめて手足のどちらかでも自由に出来たらと思うものの、キツく結ばれているわけでもないその紐は、決して舞を離さなかった。
焦燥感に耐えかねて、舞はカエルのような格好のまま部屋の中を転がり回る。
もっと高みに上りたいのか、もうこれ以上の刺激を止めて欲しいのか舞はもう分からなくなっていた。
ただただ早く楽になりたいとだけ思い、焦れ、躯を捩る。
もう、そんな時間がどれほど過ぎただろうか。
休むことを知らない淫具は舞の中からは時間の感覚を奪い、思考を溶かし、ひたすら熱を発し続ける。
しばらくして、昼の膳を運んできた楼主が見たのは、虚ろな目をしながらぐったりと倒れ込み、それでもまだ淫らな声を漏らし続ける舞の姿だった。
熱をはらみ、つんと尖った舞の乳房をいじりながら楼主は優しく声をかけた。
「抜いて欲しい?」
一縷の希望を見つけたかのようにガクガクと頷く舞の望みを慈悲に叶えてやる。
じゅぶっ…。
卑猥な音を立て驚くほど呆気なく舞の中から取り出された淫具は蜜をまといヌラヌラとした光沢を放ちながら尚も楼主の手の中で振動を続ける。
逆に舞は、勢いよく抜かれた刺激に一際大きな声を上げ、荒く息を吐いている。
「じゃあ、舞お昼にしようか」
まるで何事もなかったように楼主が声をかける。
舞を捕らえていた紐の結び目を引っ張ると、あんなに暴れてもビクともしなかった紐がハラリと解けた。
赤く縄目のついた痕を舞は撫でさする。
しかし、舞が本当に手をやりたいのは別の場所だった。
先程まで占めていた異物を懐かしむようにそこはヒクヒクと質量を求めて蠢いている。
「どうした舞?早く食べろよ。それとも、下の口で食事がしたいとか?」
楼主の卑猥な冗談にも舞の躯は一層の熱をはらみ、膝がもじもじと動いてしまうのだった。