春よ来い-2
「ゴメン、呼んどいたくせに遅くなって」
「ううん、それより卒業おめでとう」
「あぁ、ありがとう。」
少しの沈黙。
春だといえど、まだ3月の初めだからか、風が冷たい。
「あのさ、それで、話なんだけど」
彼が口を開く。
「俺たち、もう終わりにしよう」
「……」
話の内容は何となく分かっていた。
「俺もこれから地方の大学行くからもう会えないだろうし、…はっきり言って、俺、さっちゃんのことよく分からない」
「…分かった」
「ごめんな」
「ううん、こっちこそ、ごめんなさい」
「じゃあ、元気で」
「…先輩も」
そうして私達は別れた。
彼の後ろ姿が見えなくなるまで私は泣かなかった。
付き合った時間は半年もなかったけれど、その間の私が学校に来る理由は彼のためだった。
彼が告白してきたあの日、初めて手を繋いだ日、全部覚えている。
親以外に対する愛しい気持ちも、異性と出掛けたことも、キスも全部彼が初めてだった。
私は空を見上げる。
真上にある桜の木は涙で霞んでよく見えない。
今は泣こう。
悲しいから泣くんだ。
さよなら、私の初恋。
早く来い、新しい出逢い。