桜が咲く頃〜矮助〜-4
『ずいぶん良くなったみたいだな』
とアイツが笑う。
『ああ、風邪も治ったから、そろそろこの屋敷を出ようと思う。
世話になったな』
そう言って刀を手に取り身につけていると
『何か忘れてはいませんか?』
とアイツが聞いてきた。
俺は何か忘れ物をしたかと辺りを見回と、アイツは懐から紙を取り出し、ヒラヒラと振って見せた。
そして
『宿泊代に食事代、薬代等々をあわせて…満金30枚になります』
にこっと笑いながら紙を差し出してきた。
そこには、「請求書満金30枚」と書かれていた。
『何だ、この法外な値段は!?』
俺が声を荒げるとアイツは
『由緒正しき屋敷に泊まり、尚且次期当主自ら看病したにしては、安い値段だと思うがなぁ?』
などと言い、腕組みをしながら、高いかなぁと首を傾げている。
俺は頭にきたが、払えない金額ではない。
それに、世話になったのは事実…
俺は払うことに決め懐に手を入れ、財布を取り出そうと…
財布を…
……ない……
俺は慌てて辺りを探す。
ない、ない、ない、ない…
どこにもない!!
俺が放心していると
『まさか…』
体がぎくっと反応する。
『払えないのかなぁ〜?』
アイツの笑顔が恐い…
『あっあの…』
俺の言葉を遮るようにアイツは続ける。
『金がないなら、働いて返してもらうしかないなぁ』
満面の笑みで言う。
まっ待て!財布を探そう!
っと言いたかったが、アイツは言った。
『これから30日、俺の護衛として働いて貰おう』
……え゛…?