秋か春か夏か冬〜17話『みんなで行こう温泉旅行・後編』〜-1
――2日目・朝
恭介はめずらしく早くに目が覚めてしまう。
前日のドッキリのような目覚めのせいで、恭介の防衛機能が反応しているのも理由の1つだろう。
しかし理由はそれだけじゃない。そう、誰かに抱きつかれている感触があったからだ。昨日と同じく身動きがとれない……。
(まさか…ラブコメな展開からして女の子…夏輝か?それとも…??)
そう思い、恐る恐る顔を横にずらすと……
「ぐふふ……夏輝ちゃぁん……ぅ〜ん…zZΖ」
…拓也であった…。
しかも夢の中で夏輝に抱きついているらしい。なんか頭にくる……。
寝ながら抱きついてくる変態を恭介は振りほどき…
ドカーーン!
ロン毛の顔めがけて枕を投げつけてやった。
「ぅゎぁ!恭介ごめん!」
そう呟き、ロン毛が寝返りをうつ。起きたかと思いきや寝言であった。どうやら夢でまで恭介に怒られているらしい…。
(てかなんで俺が怒るんだ………??)
自分の感情に不思議に思いながらも、恭介は外の空気を吸いに部屋を出た。
時間はまだ5時半。さすがにまだみんな寝てるだろうと思っていると、旅館の庭先に亜季がいた。
俺は声をかける。
「早いんだな、おはよう。」
「恭介様っ…おはようございます♪わたくしはいつもこの時間には起きていますので…。恭介様もお早いんですね♪」
「いや……今日はホントにたまたまなんだ…夢ではないが悪夢を経験して…」
あいにく男に抱きつかれて喜ぶ趣味は持ち合わせていない。
「くすくす♪変なことをおっしゃいますね♪」
「はは、まぁ気にしないでくれ。それよりいつもこんな早く起きてなにしているんだ?」
「いつもは自分とシュウちゃんの分のお弁当を作っております」
なるほど。
「えらいなぁ…シュウのやつにも見習わせたいくらいだよ」
「ふふ♪シュウちゃんは朝が苦手で……それにわたくしはお料理好きなので苦になりません♪なので今日はやることがなくて暇を持て余してしまいます…」
亜季は苦笑いする。
「じゃぁ俺も目が覚めちゃったし、みんなが起きてくるまでお喋りでもしてるか?」
「はい♪喜んで♪♪」
寝起きは最悪な体験をした恭介だが、珍しくオチのない静かな朝をすごしたのだった。