秋か春か夏か冬〜17話『みんなで行こう温泉旅行・後編』〜-6
「は??なんだ…そんなことか。あれは亜季と愁を間違えた俺のせいだ」
「そ、それでも…」
「気にしてないって。まぁ確かにあの時は怒りまくってたけどな」
思い出しながら苦笑いする恭介。
「ご…ごめん…」
「だーかーらー、謝るなって。じゃあ…痴漢男って呼ぶのはやめないか?それでチャラにしよう。これ以上、うだうだ言ってたってしょうがないだろ?」
「…わかった…ぁ、ありがとう。俺も痴漢男って呼ぶのは、そろそろまずいと思ってた。ははは♪」
今までなんとなくあった気まずい雰囲気がなくなったのを感じ、愁は密かに微笑んでいた。
もちろん後ろを向いている恭介には知る術はないのだが…。
「何て呼ぶ?愁の好きな呼び方で良いよ」
「ぉ、俺に任せるのか!?お前は……その…な、何て呼ばれたいんだ?」
「俺か?ん〜…普通なら1コ上だし先輩じゃね?」
「先輩か…」
「でもお前に先輩って言われるのもなぁ…。あっ、なんなら、お兄ちゃんでも良いぞ?」
「おに……!だ、誰が呼ぶかー!!」
「じょ、冗談だ!そーゆーキャラ位置にした方が読者にも掴みやすいかと…」
「なんの心配をしてるんだ!人が真剣なのに〜!」
カッとなった愁は岩場の小石、桶など、手当たりしだい投げていた。
「おぃ……痛ッ!落ち着け…あんまり暴れるとタオルが…」
攻撃をやめさせようと、反射的に振り返ってしまう恭介。
パサッ
「…落ちるぞ……いや………落ち…た…よ?…」
シュウの体を覆っていたタオルが落ちた。
………。
バッシャーン!
顔を真っ赤にさせて、体を湯舟に隠す愁。
「どどど、どうして落ちるとわかってて……振り返ってるんだー!!」
「待て!誤解だって!」
「みみ、見たか?……俺の……その…からだを…」
「み、見てない!もう夕方で暗いし、湯気もすごいし、温泉は乳白色だし、おまえの意外とある胸なんて…あっ…」
人は動揺しているとき、つい本当のことを言ってしまうものである。