秋か春か夏か冬〜17話『みんなで行こう温泉旅行・後編』〜-5
バシャン。
(ん…他に誰かいるのかなぁ……岩山から水しぶきが…)
岩山の裏を覗くシュウ。
そして…
バチッ!
しっかりと目があう…。
愁が痴漢男と呼んでいる男と…亜季曰く『シュウちゃんのお気に入りの殿方♪』である恭介と…。
「「★□△!?」」
口をパクパクさせ、お互いに声にならない悲鳴をあげた。そして指を差し、同時に叫んだ。
「なんで女湯にいるんだ!」「なんで男湯にいるんだ!」
………。
(…なんで!なんで痴漢男がここに!女湯だぞ?覗きか?いや…でもコソコソしてないし……堂々としてる変態は何て言うんだ?……いや、変態で良いのか!ととと、とにかく落ち着け俺……)
完全にパニックに陥っている愁。そして恭介は顔を背けながら話した。
「と、とりあえず俺はもう出るから。どっちが悪いとかの言い争いは、出てからにしよう!」
そう言って足早に退散しようとする恭介。
(はっ……なぜこんな状況かわかんないけど…いまは2人っきり…。これを逃したら2人っきりになるチャンスがないかも。謝るなら今のうちに……)
学年の違う2人は事故以来2人っきりになる場面などなかった。好機とばかりに恭介を引き止める。
「ま…まて!ちょっと話あるから…。その…とりあえず目のやり場に困るから肩まで湯舟に入れ!」
「へ?いや、でも…」
「だ、大事な話なんだよ!少しだけ!」
「…わかったよ」
しぶしぶと恭介は湯舟につかり直し愁の方を向く。
「よし…でも痴漢男は後ろ向いとけ…」
「はっ?なんで…」
「…いくら話があって、湯舟が乳白色だからって…風呂で女をジロジロ見る気か…?」
引き止めたのは愁。だが偉そうなのもまた愁である。普段の恭介ならつっこむところだが、余裕のない今は普通に謝る。
「あっ…わ、悪い!……で、話って?」
愁は少し考えてから話し出した。
「えと……その、おまえと最初に会った電車でのこと……転びそうなのを助けてくれたよな。なのに……痴漢よばわりして……わ、悪かった…」
身構えていた恭介は拍子抜けする。