unknown quantity〜未来への道〜-10
「奏真様!それように扱う物じゃありません!それは皇希様が貴方に授けた“力”!」
「解っているよ。皇希さんがどんな想いでこれを渡したのか。……試しただけだよ?」
奏真は先ほどの威圧感ある笑顔で皇華を見た。
「それにこれは僕の宝物だよ。易々とあげるような真似はしないよ、皇華さん。」
皇華は威圧感でやられたように唇を噛み締めた。目線も外した。
「さてと、“世界の異変”で2人とも可笑しくなっているけど、気にしないでね。……。」
奏真は少し考えたようで、月都に視線を向けた。月都は驚き、慌て視線を外した。
「…博識の月都くんは今の世界の様子をどう思うかな?」
奏真は相変わらず笑顔で言った。
「…。もし、俺に間違いがないならかなり深刻化しているのでは?」
月都は真剣な眼差しで奏真を見た。
「……。半分正解で半分ハズレかな。“真実”はこうだ。“危険地区”は原因不明の突然変異体によって壊滅的。…そう死んでいると言っても不思議じゃない。」
奏真は笑顔から急に真剣な表情になった。
「…今、言っている理由は君らには戦ってもらうためだからだ。逃げたいなら、今ここから立ち去る事。……少し時間を置こう。考えた方がいい。」
奏真は教壇に寄りかかり、辺りを1回だけ軽く見回した。
数分後、宗也は立ち上がる。奏真は喜びとも悲しみとも感じられる表情で見る。逃げるかそれとも戦うかの迷いを楽しんでいるようにも思えた。
「…俺は目の前で母親を殺された。あんな想いを2度とごめんだ!だから、強くなる!強くなって仇を討つ!!」
宗也は力強い声で言った。目にも力が入っているようだ。
「…ふ〜ん。宗也くんは復讐を持っているんだね。……他の皆はどうするだい?」
奏真は見回すと、月都や菜津未、雪江はやる気に満ちていた。
「……やる気満々だねぇ。これはちょっとした“試験”だったが、解ったよ。君たちの決意は十分だよ。」
すると、麻里香は奏真に怒るように喋る。
「…奏真おじ様!私には納得出来ません!このような無能な者たちが皇希お爺様の推薦人とは。」
奏真は麻里香の言葉を聞くと頭を掻きながら答えた。
「やっぱり、あの時に盗み聞きしてたんだ。まぁ、いいや。…その皇希さん自ら来て、聖魔や僕、皇華さんに言ったんだよ?」
奏真は真剣な声で言った。顔は笑顔だった。
「…あの〜、さっきから“皇希”って言ってますけど、“無神 皇希”さんですよね?」
宗也が恐る恐る割り込んできた。奏真は不思議そうな顔になるが理由が解ったのか、笑顔に戻る。