陽だまりの詩 1-4
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俺達はとりあえず中庭に出て会話を始めた。
「驚きました」
「俺もだよ、車椅子から落ちてんだもん」
「あはは…お茶を取ろうと前のめりになったら落ちちゃいました」
「…気をつけろよな」
「…はい、重ね重ねありがとうございました」
「だからいいって」
行儀の良すぎる彼女に苦笑いする。
「でも、なぜこの病院にいるんですか?」
「ん、きみを探しにきた」
「えぇっ?」
ひどく顔を赤くし狼狽する彼女。
「冗談だ、俺、余命三ヶ月なんだ」
「えええっ?」
またも狼狽する彼女。
「冗談だ、すまん」
「……天道さん、ひどいです」
「悪い、冗談が過ぎた」
俺が真面目な顔で謝ると、彼女はふんわりと笑って言った。
「……じゃあ?」
俺はなんとなく気合いを入れ、コーヒーをぐいっと飲みほした。
「妹が入院してるんだ。この間もお見舞いの帰りだったんだよ」
彼女はそう聞いた途端、とても悲しそうな顔をした。
前から思っていたが、彼女は本当に表情がころころと変わる。
感受性が豊かなのだろう。
まるで、初めて外に出た子どものようだ。
「そうなんですか…天道さん、本当に優しい人なんですね」
「そうでもないよ」
「……ふふ」
今度は面白がって笑う彼女。
「響さんは…足、悪いの?」
聞いてはまずいのかとも思ったのだが、やはり気になってしまった。
「生まれつき動かないんです。もう慣れましたけど」
「そうか」
俺の表情が曇ったのだろう。彼女はフォローを入れてくれる。
「……天道さん、きっと私のほうが年下ですから。奏って読んでください」
「え?」
「私のことを響さんってなんか同じ目線で話してるじゃないですか」
悲しいことを言うな、彼女は。
彼女が立つことができれば、きっと目線がこんなにも違うことは無かったんじゃないか。
まあ、彼女はそんなつもりで言ったわけではないのかもしれないが。
「っていうか、きみは歳いくつ?随分と若いみたいだけど」
「私?私は十六歳です」
俺はゆっくりとその場に跪いた。
「どうしたんですか!?天道さん!?」
俺みたいなおっさんと十六の女の子が二人でいていいのか?
俺、真剣に犯罪者だぞ。
だめだ。しかも美沙と同い年なんて…
彼女は妹じゃないんだぞ…