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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈風神篇〉中編-3

「貴未さん!」

兵士の誰かが叫ぶ、魔物を倒したのは貴未だった。彼の手には不似合いな大きな剣がある、しかしそれを彼は使いこなしていた。

貴未は兵士達に背中を向けたまま叫んだ。目の前の魔物から決して意識を外さない。

「何やってんだ!!しっかりしろ!!」

次々に襲い掛かってくる魔物を切り倒していく。誰が見ても明らかなほど貴未は戦い慣れしていた。その姿に思わず見とれるものもいる。

「ここは戦場だぞ!!」

貴未の大きな叫びに兵士達の心は動いた。剣や弓など様々な武器を手に取り立ち向かう。

本当の意味での戦争が今始まった。

「気を抜くなよ!周りを見て動け!」

貴未の指示が自然と皆に行き渡る。一人の兵士が間合いを取るためかふと貴未の傍に寄った。

「貴未さんは彼らのような敵を相手にした事、あるんですか?」

そう言って魔物に切り掛かり、また間合いを取るために戻ってきた。

「そうそう有る訳ないでしょ!?こんな輩!」

貴未も同じように斬り付けては戻ってくる。

「なのに、その勇気ですか。」

兵士が静かに呟く。貴未は気付かずに目の前の敵に集中していた。

「ありがとうございます。私達も見習わねば。」

その言葉に貴未は微笑んだ。

「オレ達が前線にいる。絶対守りぬくぞ!」

貴未の言葉に闘志を取り戻した声が大きく答える。誰が相手でも自分達の後ろには守るべきものがある、その気持ちを強くした。

兵士達と魔物の戦いは城門を突破された事により始まったが、突破されたのは一ヶ所ではなかった。

次々と魔物の群れが城門をくぐろうと押し寄せてきた。城内への侵入も時間の問題にすぎない。

城門を突破された事はもちろんカルサは気付いていた。

「千羅、大物がやってきたぞ。」

「ですね。皇子の結界を壊し魔物を招き入れた人物、誰でしょうか。」

カルサは答える事無く考え黙りこんでしまった。思い当たる人物は約二名いるが、それが正解とは限らない。誰が来るにしろ具合は悪かった。

「千羅、兵士達の手助けに行ってくれないか?」

魔物を相手にした事などほとんどない状態の兵士達には、多少困難な相手だ。カルサがそう言いだすのも何となく予想は付いていた。

しかし千羅の想いが違う。


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