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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈風神篇〉中編-14

「私はロワーヌ。」

ロワーヌ。

頭の中で繰り返した瞬間、リュナの全身に緊張が走った。鮮明に思い出す記憶、その名前は確かリュナとカルサを封縛した人物の仲間。

警戒音が鳴るのは当たり前だった。

リュナは怯える気持ちを押さえて立ち向かった。



「風を操る子、貴方が風神?名前を教えてくれる?」

問いかける表情は優しく、怒りも恐怖も、リュナが出す全ての感情を受けとめてしまう、そんな感覚に陥った。リュナは警戒しながら答える。

「リュナ・ウィルサ。」

二人の視線がぶつかる。

「違うわ。」

口を開いたのはロワーヌ。やはりどこか淋しそうな表情が残る。彼女は続けた。

「貴方の本当の名前が知りたいの。」

今聞こえた言葉にリュナは疑問を持たずにはいられなかった。ライムもロワーヌも、しきりに《本当》を知りたがる。

今回の舞台裏はなんなのだろうか。

魔物を送り込み、殺戮を行い、求めるものは真実だけだろうか。その真実の価値は何なのだろうか。

「私の名前はリュナ・ウィルサよ。」

少しずつリュナの中の怒りが膨れ上がってくる。いつもいつも、何故人を傷つける事しか行わないのだろうか。

「それ以外にないわ!」

リュナの周りに風が生まれる。目に見えて分かるほど闘志をむき出しにしていた。

「貴方の手に付いたその血、誰を傷つけたの!?答えて!」

感情が高ぶり声が大きくなる。いくらロワーヌが穏やかに見せても、彼女の手や服に付いた血がそれを否定する。

確実に彼女は誰かを傷つけた。

「何の為にこんな…っ!」

ひどい事を。そう続けたくても声にならなかった。こうしている間にも戦い、傷ついていく人はたくさんいる。

「この世には知ってはいけない事が沢山ある。知らなくていい事も、逆に知っておかなくてはいけない事も。」

ロワーヌの言葉をリュナは睨んだまま、黙って聞いていた。

「占者なんて名ばかりで、人の過去、未来を覗き見し知ったように口にする。探られたくない過去も全て自分の意のままに覗き深入りしていく。」

ロワーヌが何を言おうとしているかリュナには分かってしまった。分かってしまったが、決定的な言葉を言われるまでは自分を保っている。

「あの女は過去を覗き、今は太古と呼ばれる時代を知った。知らなくてもいい事を知り、深追いした。そこまでの力の強さは認めるけど。」

ロワーヌは血で汚れた右腕を見つめる。さっきまでの出来事を思い出しているのだろう、強く拳を握りしめた。


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