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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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高崎龍之介の告白 〜伊藤美弥について〜-1

僕の名前は高崎龍之介。
年は十六歳。
彼女が……います。
彼女の名前は、伊藤美弥。
同い年……同じクラス。
抱き締めると柔らかくて甘くていい匂いがして、とても気持ちがいい女の子。
柔らかくて甘いのは唇もほっぺたも……どこもかしこも。
どういう付き合い方をしているのかは、成人マークが入るのでそちらを参照して貰う事にして……。
ある日、美弥から尋ねられた。


「ねぇ……龍之介」
ミルクと砂糖たっぷりのコーヒーが入ったマグカップを差し出しながら、美弥が尋ねて来た。
僕が割と甘党……というより、体格維持のための筋肉トレーニング後に甘い物を摂って疲労回復を謀る事は知られているので、こういう時に美弥は甘い物を作ってくれる。
「気になって気になって仕方ないから聞くんだけど…………」
僕の隣に腰を降ろした美弥が、聞いて来た。
歯切れが悪いのは、何故なんだろう?
「一体私のどこを好きになったの?」

ぶゥ。

僕は危うくコーヒーを吹き出しかけた。
「ななななななな」
慌てるあまり、まともな声が出て来ない。
「だって」
美弥がうつむく。
「気になるよ……」
美弥の目尻が滲んでいるのを見て、僕はズキリと心臓が痛むのを感じた。
「美弥……」
マグカップを置いて、美弥を抱き締める。
「龍之介、かっこいいもん……私、不安だよ……」
いつも甘えさせてくれる美弥。
彼女の言によると僕はクラスじゃひどく目立つそうで、『あの一件』さえなければ僕を好きにはならなかったとか。
あんなとんでもない目に遭った美弥には申し訳ないが、僕はあの出来事に内心で感謝している。
あれがなければ美弥が僕を好いてくれる事はきっと、なかっただろうから。
「……聞きたい?」
「聞きたい」
「……どうしても?」
「どうしても」
ふうっとため息をつき、僕は安心させるように美弥を抱き締める。
『龍之介。お前の嫌な過去を知った上でここまで優しく包み込んでくれる女の子は、希少だと思うぞ。絶対、離すなよ』
少し前に言われた兄さんの言葉が、頭の中をリフレインする。
「……分かった」


あれは……去年の今頃だったかな。


「就職、決めて来た」
兄さん――高崎竜彦がそう言って家に帰って来たのを、当時半引きこもり状態だった僕が出迎えた。
いや……それは正しくないか。
何の前触れもなくあの事を思い出しては所構わず失神するから、自主的に屋外へ出る事を控えてたんだから。
「立花の親父に、感謝されたよ。『娘を返してくれてありがとう』ってな」
居間に落ち着き、嫌みたっぷりに吐き捨てる兄さん。
そうして元婚約者を切り捨てる事で、僕の心の傷が早く癒える事を祈ってくれている。
「長野ンとこのカフェで働かせて貰おうとしたら、『おメェみたいなパティシエ雇えるかぁっ!』ってチョップ食らったしなぁ……決まってよかったよ」
苦笑いする兄さんの顔を見て、ふと僕は質問する。
「兄さん……父さんと一緒に、行く?」
――父さんは、ごく普通のサラリーマンだ。
辞令を受けて春から九州の方へ赴任する事になり、母さんはそれに付いて行く事が既に決定している。
「残るつもりだよ」
兄さんは、あっさりとそう言った。
「もう親のスネかじってもいいトシじゃないしな」
今度は、照れ笑いを浮かべる。
「それに、俺は生まれ育ったここに愛着がある。離れたく、ないんだよ」
「……そっか」
「龍之介。お前は?」
兄さんの言葉に、僕は喉を詰まらせた。
父さんも母さんも『あの一件』以来どこででも失神してしまう僕の事を心配し、手元に置きたがっている。
だけど、僕は……。
「……分からない」
正直な話、迷っていた。
このままの状態が好ましくない事は、誰の目にも明らかだろう。
だけどこのまま九州へ行くのは逃げている気がして……二の足を踏んでいるのが現状だ。
「願書は出しちゃったし……とりあえず高校の試験受けて、一年くらいはふらふらしようかな」
ためらいがちにそう言うと、兄さんは『なるほど』という風に頷いた。
「じゃ、春からは二人暮らしだな」
「うん……」


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