未来と過去と今と黒猫とぼく ー約束・前編ー-6
「でも、少し広すぎるかな」
「広すぎるのは嫌い?」
「うん、だって、一人でいると寂しくなっちゃうからね」
「ふぅん…」
「君には分からない?」
そう言われて、ぼくは想像してみた。
誰も居ない、広い公園。
無人のブランコが風で音を立て、すべり台はただただ日暮れ間際の夕日に照らされる。
風景だけなら、確かに物悲しさがあるだろう。
だがそこにぼくを加えた時点で、ぼくは不思議な安心感を感じた。
ぼくがただ一人、ぼくはただ一人。
広い公園、何をするでもないぼくだけがそこにいる。
ぼくはその想像に何の疑問も感じる事が出来なかった。
まるでそれがそうあるべきモノのように思えてならなかった。
なぜ一人が寂しいのか、ぼくにはそれが分からなかったのだ。
返答の仕方を少し考えて、ぼくは言った。
「分かる気もする、分からない気もする」
「つまりは分からないんだね」
「まぁ、そうだね」
「あはは」
何がおかしいのか、伊隅さんはヘラリと笑った。
そしてくいとおしるこを飲むと、それが最後の一口だったらしい。
今度は缶の底をポンポンと叩いて、缶の底に張り付いたあずきを食べ始めた。
その開けっぴろげな仕草が何だか伊隅さんらしくて笑ってしまいそうになり、ぼくはミルクティーの缶を手で遊ばせる事でそれをやり過ごした。
大丈夫、優姉さん、約束は守れるよ。
だってぼくには寂しさが分からないんだから。
きっと、誰かと一緒に居る資格がぼくには無いよね。
大丈夫、分かってる。
あなたがくれた約束を、ぼくはちゃんと大事に持っています。
それが例えあなたの憎しみであろうと。
ー終わった事・前編ー 完