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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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仮装情事。〜鉄の女と人気レイヤー〜-7

いない。

いない。

彼の姿は、どこにもない。
間に合わなかった、と私は落胆。側にあった柱に寄りかかり、ため息をついてしまった。
(……全く…私は何を期待している…)
ため息の後は、自嘲。多分、自分を納得させるため。
(よく考えてみろ。哲也には待つような理由などない。念願だった「アイリ」との対面は済ませたわけだし、こんな寒空の中、彼女を待っているぐらいの理由でもなければ待つはずがないだろう…)
その行動は功を奏し、私は次第に普段の落ち着いた気持ちを取り戻す。すると、さっきまでの自分がだんだんとばからしくなってきた。
結果、帰ろうという気持ちがわいてくる。
私はその気持ちにおとなしく従う事にした。諦めが早いが、自分だって来ないであろう人を寒空の下で待ち続けるような理由も必要もない。それに、往生際悪く待ち続けるより、あっさり諦めて帰ってしまった方が早く立ち直れる。
「…帰るか」
私は、衣装が入ったバッグを背負い直し、駅のある方角へ向き直った。

「京香さん」

だが一歩は踏み出せなかった。

向き直った先には、コートを着た哲也が立っていたから。

「思ってたより、早かったっすね」
彼の口調と言葉は、どこか固い。当然だ、何せ予想外の相手に予想外の場所で出くわし、引き止められたのだから。多分、動揺を抑えるのに必死なのだろう。
「あ、あぁ…待たせているからな」
そして、それは自分も同じ。実はちゃんと待っていてくれたという事に動揺して、それを抑えるのに必死になっている。
「「……」」
結果、二人の間でまたしても言葉が尽きる。
いつまでもそうしているわけにはいかないのはわかっている。だが、募っていくのは焦燥感ばかりで、肝心の言葉が全く出てこない。
これではいけない。
早く何か言わなくては。
何でもいいから取り繕わなければ。
そうやって、どんどん自分が追い詰められていく。
そして――

「……哲也」

――何かが、切れた。
やけにクリアな思考が、私に答えを示してくれる。
だが、一方で普段の判断能力は吹っ飛んでいたようだ。何故なら――

「…私の家で話をしようか」

――示された答えは、やけに手がこんでいる上に、荒唐無稽なはずだったから。


それから、約一時間。私は哲也を半ば強引に連れ、自分の住むマンションに帰ってきていた。
「「……」」
それまで、揃って無言。どこか異様な雰囲気が漂っている。
「……哲也」
その沈黙を破ったのは、私。鞄から鍵を取り出しながら、背後に立つ哲也を呼ぶ。
「最初に言っておく。家に人を招くのは君が初めてだ。人を招くようにはしていないから、そのつもりでいてくれ」
そして、遠回しに覚悟しておく事を言っておいた。対する哲也は、「は、はいっ」と軽く畏まる。
もしかしたら、女の家に上がるのは初めてだろうか……まあ、あまり関係ない。
私は扉を開けると、哲也を先に行かせようと道を開けた。彼はそれに従って、部屋の中へ入っていく。その後に続いて私も入った。
「リビングの方で適当に腰掛けてくれ。私は荷物を置いてくる」
哲也をすぐにリビングの方まで行かせると、自分は別の部屋に引っ込む。

――ちなみにそこは、作ってきたコスプレ衣装を保管するためだけの部屋。私のコスプレイヤーとしての過去を振り返る事もできる場所だ。


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