仮装情事。〜鉄の女と人気レイヤー〜-11
だから今回も――そう思っていた。
だが、実際には濡れている。哲也から何かされたわけではなく、ただ自分が哲也のモノを舐めていただけで。
それはつまり、感じる事のなかった「鉄の女」が、フェラチオだけで濡れている――という事。戸惑うには充分過ぎる材料だった。
(…嘘…どうしてこんなにも濡れている…?今まで、こんな事なかったのに…)
だが、異変はそれだけではなかった。
「んふ…ちゅぱ……じゅる…ん…ディーン…私、努力しますから…れろ…もっと、感じたお顔を見せてくださいませ…」
哲也を実際に「ディーン」と呼び始めている。
亡国の姫君となった「エイナ」をただ一人で守り通した戦士「ディーン」と。
しかも、困惑する私の理性をよそに、「エイナ」は彼を精一杯愛し続ける。その一方で、スカートの下にやった手でショーツをずらし、くすぐるように指を動かし始めた。
その瞬間、痺れるような甘い刺激。
「んぅぅんっ」
それは理性を溶かしていく、やはり未知の刺激。私は彼のモノをくわえたまま、くぐもった声で甘くさえずる。
すると、さえずりは振動となる。そして、振動はくわえたままのモノに伝わり、彼に振動刺激を贈呈。より一層悶える。
「…ぅ、あ…は……くっ…」
余裕がなさそう。無意識だろうか、私の頭に手を置いている。
行為を止めてほしくないのだろうか。なんだか嬉しい。
「…じゅる…ん、ちゅ…」
その嬉しさを表したくて、私はもっと激しく、丹念に舐め回す。一方で、先程感じた快感を更に味わいたくて、スカートの下でうねうねと指を動かし始める。
「ん…んふぅっ…ちゅ……ふ、はぁん…ぁ…んぅ…」
男の象徴を舐めしゃぶるという行為が、胸を高鳴らせる。
自らを弄んでいるという事実が、体を疼かせる。
止まらない。止められない。
――否、止めたくない。
もう、鉄の女が濡れていようが、空想の人物を呼んでいようが、どうでもいい。
感じたい。
感じさせたい。
「エイナ」は、「ディーン」と共に、気持ちよくなりたい――
「…い…イクぞ……エイナァ…っ!」
口の中にどろどろした熱いものを出された。
「んんっ!?」
熱さと苦さと、口内を打つ勢いに驚き、自慰をしていた指で変な所を刺激してしまった。
瞬間、びくん、という脈動。
直後、上下左右前後全ての感覚がぐちゃぐちゃに。
そして、全身を駆け巡る強烈な気持ちよさと、どうしようもない脱力感が、頭を真っ白に染め上げる。
「ん、んぁぁあっ!」
あまりに気持ちよくて、余剰分は甘い悲鳴に。その時、口から出されたものがだらだらとこぼれ、くわえていたモノを伝っていく。
そこからはむせかえるような生臭さ。きっといつもなら、鼻を摘むだろう。
――でも。
なんだかくせになりそう。
「…ぁ…ん…はぁ…」
「はぁ…はぁ…」
二人して息を荒げ、短い呼吸。
その時、私は口の中に彼が出したものが残っているのに気付く。
息をするには少し邪魔。残しておく理由も特にない。