夜に芽吹く向日葵-8
昼間、言葉を交わした日の二週間後、久しぶりに男が部屋へ来た。
「買ってきたんだ」
男の手には、和菓子。
私は少し驚いた。
男が私に何かを買ってくることなど無かったし、しかもそれが和菓子とは。
「和菓子なんて、似合わないね」
「そうか?俺の好物なんだ」
私は急須を出し、茶葉をいれ温かい緑茶を用意した。
別に気を使ったわけではない。自分が飲みたいからだ。
男が和菓子に食らいつく姿はなんとも不思議なものだ。
「知らなかった」
「当たり前だ、誰にも言ってないから」
「そう…」
そのまま私たちは…無言で和菓子を食べた。
いったいこの男は、何を満たしにここへ来るのだろう。
その後…愛の囁きがある訳でもなく、私たちは交わる。
ただ息を荒くするだけ…。
一度たりとも、この男は私の名など呼びはしない。
避妊もせず…ただ、粘液を放出するだけ。
いつもなら、さっさと身支度を整え帰って行く。
しかし…
今日の男は、裸のまま…私の横で放心している。
「今夜は帰らないのね」
「帰れと言われれば帰るよ」
こんな時だけ、私に選択権を与えられても意味がない。