夜に芽吹く向日葵-3
さっさと寝室に戻ろうとする私に、後ろから抱き着いてくる。
そうは言っても…愛情の破片も感じられないその行為。
微かな香水の残り香。
一緒に過ごすべき女と交わってきた後なのか。
だとしたら、今…私に抱きつく意味が分からない。
溜まった動物としての欲求は、発散してきたというのに。
「彼女としてきたんじゃないの?」
私は直球で彼に言う。
「まあ…」
彼も、それがなんだと言わんばかりに即答する。
「じゃあもういいじゃない…」
私は、明日の仕事に備え、さっさと寝てしまいたかった。
だったら、玄関先で拒めば済むのに…私はいつもそうしない。
そして、彼も…拒まれたからといって怒って帰るわけでもなく、そのままこの部屋で一夜を過ごす。
「そうか…じゃあ、もう寝るか」
何もなかったかのように、淡々と答えた後…
彼はここが自分の家であるかのように、勝手に自分の着替えを出しシャワーを浴びに行く。
よかった…
私が、今夜交わりたくなかったのには、眠かった以外にもう一つ理由がある。
妊娠する可能性がある期間だからだ。
彼は私と交わる際、絶対と言っていいほど避妊をしない。
それが彼の嗜好なのかと思い、最初の頃訊ねたことがあった。
「ねえ…彼女とする時も、つけないの?」
彼は淡々と答えた。
「いや、つけるよ」
遊びだったら、相手がどうなっても構わないというのか…
最低な男だと思った。
けれども、それからも私たちの交わりは継続している。
その最低な男に、平気で体を開く私はもっと最低な女なのだろうか。