夜に芽吹く向日葵-13
「あ、そろそろ午後の診察ですよ」
主任は今日都合で休んでいるため、私と彼女は大忙しだ。
午後はレントゲン撮影の予約がつまっている。
「旧式の機械だと面倒ですよね」
いつもは主任がやってくれる仕事。なれないので私も戸惑う。
患者が撮影の部屋に入り、院長は外で待機している。
「ほら、撮るから早くでろっ」院長が言う。
一瞬私は動きを止めた。
「!ほら、何ぼ〜っとしてるんですか」
「そんな急がなくても」
「何いってるんですか、もし妊娠してたらまずいじゃないですか〜なんて」
そうだった…。
若い女性の患者などがくると、妊娠の可能性が無いか執拗に確認する。
もし妊娠していて、放射線を浴びせてしまったら大変なことになる。
勿論、医療関係者も同じだ。
妊娠…
そういえば…生理がかなり遅れている。
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市販の検査薬を買った。
普通だったら、その結果に酷く緊張するものなのかもしれない。
けれども私は、平然としていた。
それは、妊娠していたとしても「産む」ことを選択などしないからだ。
結果は、予想通りだった。
私は妊娠していた。
男には、言うつもりはない。
言ったところで、たいした反応も返ってこないだろうから。
男は以前より、部屋に来る回数が増えていた。
かといって、何か変化がある訳ではない。
夜中に訪れ、交わり…そのまま寝てしまうだけだ。
しかし、こう頻繁に来られたのでは、私はさすがに困ってしまう。
頻繁な交わりは、昼間の疲労に繋がり…
私はまだ、産婦人科に行くタイミングを逃していた。
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