夜に芽吹く向日葵-12
水着を一緒に買いにいったことで、私はその若いナースとプライベートでも付き合うようになっていた。
彼女も、総合病院に勤めていたが…
先輩からの執拗に苛められ退職したとのことだった。
しかし彼女は強い。
「いじめられたのが苦しくて辞めたんじゃないんです。バカバカしくなっちゃって」
逆に、私が大病院を辞めた理由を聞かれた。
男に話したのと同内容を彼女に話すと…
「信じらんないっ!誰かが印鑑勝手に押して、しかもシャチハタなんだから誰だって押せるじゃん!」
彼女は、まるで自分のことのように怒ってくれた。
それがとても…嬉しかった。
たった一人でも、私を信用し共感してくれる存在がいること。
それは、こんなにも嬉しいことだったのだと…私は久しぶりに実感した。
彼女のように、はっきり口にしてくれると分かりやすくていい。
私は相手を察するのが苦手だからだ。
「知ってよかった〜」
「ええ?暗い話なのに」私は少し恥ずかしくなった。
「知ってよかったですよ、これから私たち、もっと仲良しになれるってことだもん」
単純な理屈だが…なんだか嬉しい。
その時私は、彼女の言葉を頭の中で復唱してみた。
(知ってよかった…もっと仲良しになれるってことだもん)
どこかで聞いたような台詞だった…。