夜に芽吹く向日葵-11
季節が変わり、昼間は少し汗ばむ陽気だ。
もう薬物治療もしばらく止めていたし、診察もこれで終了でいいだろう…
かかりつけの医師が言った。
もっと早くでも大丈夫だったかもしれない。
陽を嫌いと思わなくなったからだ。
同僚の若いナースが「夏になったら海にでも行きません?」と誘ってきた。
「もう水着なんて着れないよ」
「何言ってるんですか!まだまだいけますよ〜」
結局、仕事後に水着の購入を付き合わされた。
しかも、私にまで「これが可愛いから」と言って押し売りされてしまった。
部屋に戻り、水着をハンガーに掛けた。
店では少し派手くらいかなと思った水着も、私の地味な和室に飾ると、とんでもなく派手に見える。
間が悪いことに、そんな夜に限って男が部屋に来てしまった。
「どうしたんだよこれ」
「あ…別に…」
「お前が着るのか?」
「そうだけど、派手…よね」
この男に弱みを見られたようで、私は急に恥ずかしくなった。
しかし男の様子がおかしい。
水着を見ているのに、意識はそこには無いようだ。
「水着…今年の夏に使うつもりなのか?」
「当たり前じゃない、冬に使うバカはいないでしょう?」
「そうじゃなくて…お前…」
男は、何かを言いかけたが言葉を止めた。
この男は、私が以前のように黙って淡々と迎えるのが好きなんだろう。
私と口論などするつもりはないらしい。(迎えているつもりもなかったが…)
私は交わる時以外、やはりこの男のことが理解できない。
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