ヒトナツF-5
夏が終わり、秋が終わり、冬が終わり…
辺りはちょうど桜が満開だった。
「……おはよう、桜」
「……おはようございます、健吾さん」
二人で手をつないで並木道を歩く。
取り留めのない話で盛り上がる。
俺が空港から帰ったあと、真っ先に桜に会いに行った。
桜は最初は戸惑っていた。
しかし、“渚さん、やっぱりあなたは…”なんて一人で呟き、あっさり結論に至ったようだ。
それから俺と桜は、少しの時間でも一緒にいることを望んだ。
今なら心から、桜を愛していると言える。
桜の笑顔を見れること、本当に“アイツ”に感謝していた。
どれくらい歩いただろうか。
目の前には、背が高く、ボロボロのリュックを背負った一人の美しい女。
でも今度はタンクトップにジーンズではなく、春物の可愛らしい格好をしていた。
三人で目を見合わせて、まず俺が言う。
「……おかえり」
桜も続く。
「……おかえりなさい」
そして“アイツ”が言う。
「……ただいま!」