ヒトナツF-2
***
翌日。
二人で空港まで車で向かう。
空港は意外と近いから、ビビらなくても運転できる。
「……」
「ねえ」
空港近くまで無言だった二人だが、渚は口を開いた。
「ん」
「……桜、見送りに来てくれないんだって」
「……ふーん」
「あたしは来てほしかったけどね。せっかくこっちで友達ができたのに、残念」
「……」
渚がアメリカに帰れば、俺は桜とはもう関わりがなくなる。
というか、そう決めている自分がいた。
それでいいんだ。
だって、俺じゃなにもできないし。
何より桜は可愛いから。きっと新しい彼氏ができるよ。
「健ちゃん」
「……ん」
「さっきからなに考えてるの?」
「……」
ドキッとした。
渚は相変わらず察しがいい。
「健ちゃん!」
「!」
さらにビクッと体がはねてしまった。
なにを言う気だ……
「…青よ」
「ぶっ」
慌てて信号待ちの状態から急発進させるが、幸い後続の車はいなかった。
また数分、車を走らせると、滑走路と大きな建物が見えてきた。
「…桜がそんなに気になる?」
「はあ?」
またも突然。
しかし渚は、ただ正面を向いて言った。
何となく、それが独り言のように見えた。
それにしても、渚はなぜそう言い続けるのか。
「あのね、あたしが帰ったら、健ちゃんが桜を守るんだよ?わかってる?」
「あ?そんなことできるわけねえだろ」
重い空気が車内に漂う。
しつこい。
なにが言いたい?
「……わかってよ」
そう呟いた声は、俺にはかすかにしか聞こえなかった。