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「命の尊厳」
【ホラー その他小説】

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「命の尊厳」前編-13

「桜井さん。これからどうします?」

問いかける高橋に対して桜井は余裕の表情を向けた。

「明日からは現場周辺を洗ってみよう。ひょっとしたら修理に出していないかもしれん」

「またですかぁ…」

高橋は、さもうんざりと言った表情を浮かべる。対して桜井は高橋を優しく叱りつけた。

「何を弱気な事を言っとるんだ。たかが3ヶ月で。オレがオマエの歳の頃には1年間未解決の事件なんてザラだったぞ。それに亡くなった被害者の事も考えてみろ」

高橋は何も言えなくなった。

「すいません…」

うなだれる高橋。
少し短気ではあるが、素直で何より正義感に溢れている。そんな高橋を桜井は気に入っていた。

「じゃあ次は、〇〇町の〇〇自動車に行ってくれ」

2人を乗せたクルマは、ゆっくりと動き出した。





ー夜ー

父親の邦夫から仕事で遅くなると連絡を受け、由貴は母親京子と2人だけの夕食を摂っていた。

献立は和食だった。
カレイの煮付けにインゲン豆の胡麻味噌和え、味噌汁にぬか漬け。

「いただきま〜す」

由貴はカレイの煮付けを一口食べた。途端に顔が歪む。

「お母さん。これ、味付けが濃いよ」

そう言って口直しに味噌汁を飲んだ。が、由貴はまたも顔を歪める。

「…お味噌汁も、ちょっと塩っぱい」

「そお?」

京子はカレイと味噌汁を食べてみるが、まったく分からない。

「…別に、普段の味付けよ」

「そうかなぁ。私、食べた途端に塩辛いと思ったのよ…」

由貴の言葉に京子は考える。今朝のミルクティーの件といい、娘の味覚が何故変わったのかと。

しかし、まずは食事が優先だ。

「じゃあ、味噌汁はお湯で薄めて煮付けは置いておきなさい。別のオカズ作ってあげるから」

京子はテーブルを立つと、冷蔵庫に入っている鶏肉を塩コショウをせずに焼いて由貴に出した。

「ありがとう。お母さん」

由貴は塩コショウをわずかに振ると、鶏肉を一口食べる。その姿を黙って見つめる京子。


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