投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「命の尊厳」
【ホラー その他小説】

「命の尊厳」の最初へ 「命の尊厳」 11 「命の尊厳」 13 「命の尊厳」の最後へ

「命の尊厳」前編-12

「…おかしいなぁー」

そう言って再び口をつけて一口飲み込む。が、やはり甘過ぎる。
仕方なく全部ムリヤリ飲んだが、先ほどまでの爽快感は何処かにすっ飛んだ。

「うえぇ…明日から砂糖無しを飲もっと」

由貴の反応を京子は不思議に思ったが、あまり深くは考えなかった。

「そろそろ帰りましょうか?」

ウォーキングを終えてた2人は、自宅へと戻って行った。




ー〇〇市ー


小さな自動車整備工場。

くたびれたツナギ姿の男達が、クルマの底に潜り込んで整備を行っている。
そこに場違いなスーツ姿の2人組がいた。


桜井と高橋だった。


「すると、こちらで修理されたんですね?」

年配のツナギ姿の男が、桜井の質問に答える。

「ええ。3ヶ月ほど前にボンネットにフロントバンパー、グリル一式、フレームの矯正も含めてやりましたよ」

(やっと見つけたか!)

桜井の身体にゾクゾクとしたモノが走る。

「その車種は?」

年配の男は記憶の断片を探るように考えた後、思い出したように答える。

「そうそう!カ〇ーラの営業車だった」

「エッ!それは間違い無いですか?ニッ〇ンじゃなかったですか」

そばにいた高橋が訊き返した。
だが、年配の男は首を横に振ると、

「いや、間違い無い。あれはカ〇ーラだった」

男の言葉に落胆の色を見せる高橋。対して桜井は、丁寧にお礼を言ってその場を立ち去った。


ここ3ヶ月。彼らは野上諒子轢き逃げの容疑者を追っていた。

最初の1ヶ月は県警あげての合同捜査班を作って調べていたが、その後は桜井と高橋を残して捜査班は縮小となった。

仕方ない事だった。事件は日々、起きているのに長い期間1箇所にマンパワーを集中させるわけにいかない。

分かっているのは、ブレーキ跡、と剥がれた塗料片からニッ〇ンの小型乗用車で色はシルバーという事だけだった。

それでも桜井と高橋は、ここ3ヶ月で、ほぼ県下の自動車修理工場を調べ尽していた。

重い足取りでクルマに戻る桜井達。


「命の尊厳」の最初へ 「命の尊厳」 11 「命の尊厳」 13 「命の尊厳」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前