ナツユメ-1
目が覚めるとそこは、小さな川の流れる静かな土手だった。
(いつの間に寝てしまったんだ・・・?)
数時間前、この木陰を見つけて居座り、ぼうっとしている内に、どうやら眠ってしまったらしい。
おそらくもう昼過ぎになるだろう。
今年、久々に俺は田舎を訪れている。
そう、なぜだか幼い頃、ここにどうしても来ようとしなかった。
もう、かれこれ八年ぶり位になるだろうか。
ここに来たからといって、特別な用事はこれといって無いが、
昨年、高校受験のおかげで休みを十分に満喫出来なかったためか、今年、無性にここへ来たくなった。
たまにはこんな風にのんびりするのもいいだろう――。
蝉が鳴いている。風がかすかに小枝を揺らす。
本当に静かだ。小川のせせらぎは、心地良いBGM。
(しまった。ここで眠ると、次に目覚めるのは夜かもしれない・・・)
まどろみの中で、かすかにそう思い、体を起こした瞬間だった。
「久しぶりだね、桐一君。」