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驚くべき偶然
【その他 推理小説】

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驚くべき偶然-3

武は続けて聞いた。
「殺す理由なんてなかっただろう。」

「俺はお前たちの幸せが許せなかったんだ。お前には言ってなかったが、7年前に俺の婚約者は結婚式直前に交通事故で死んだんだ。俺の心は堕落した。だから…お前にもこの辛さを…辛さを…」

「でもそれだったら……お前どうして自首する気になったんだ。

「日がたつにつれて、俺は自分のしたことが間違っていたと思うようになった。そして今からでも遅くない。自首して罪を償おう…そう思ったんだ。本当にすまない、武」徹は泣いていた。


橋本はまだ徹が犯人と言うことに確信を持てずにいた。

武は少しの間考えていたが、意を決したようにこう言った。

「刑事さん…俺たち2人を逮捕してください…2人で罪を償います」

橋本は驚いて
「なぜ高野さん、あなたまでもが…。」と聞いた。
徹も驚きを隠せずにいた。



武は事件の真相をゆっくり話し始めた。
「あの日の夜、家に帰ってリビングにいき、電気をつけてみると朋美が倒れていました。驚いて近寄ってみるとまだ息をしていました。あわてて救急車を呼ぼうとすると朋美が弱々しい声でこう言ったんです。
『武…あんたの帰りが遅いから刺されたのよ。どうせあんたは私を守れるような人じゃなかったのよ。』って。」
武は一度大きく深呼吸した。

同時に2人も一瞬だけ緊張感から逃れた。

「俺はその言葉が許せなかったんです。」

武が話し始めたので、2人は慌てて先程の体勢に戻った。

「俺は朋美に楽をさせたいという一心で頑張って働いてきました。それなのに朋美は俺の気持ちを全く理解してくれていなかったんです。そしてカッとなって包丁で朋美を…それから自分でも気づかないうちに警察へ連絡していました…興奮していて誰に襲われたかを聞くのも忘れていました…」

少しの沈黙の後、橋本はようやく真相を知り得た、というように頷いて、2人と共に部屋を出て行った。


部屋には沈黙だけがのこっていた…


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