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驚くべき偶然
【その他 推理小説】

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驚くべき偶然-1

9時をまわっていた。


高野武は都内の会社で残った仕事を片付けながら呟いた。
「あぁあ、今日に限ってどうして残業なんだよ。今日は朋美と食事の約束をしてるのに。これじゃぁ今日も無理だな…また朋美に怒られるぜ。」
朋美とは武の恋人で、同居しており、結婚の約束も交わしている。

「食事くらいいつでもできるじゃないか。まぁ御愁傷様。じゃぁまたな。」
そう言ったのは同僚の赤木徹だ。
徹とは5年間、様々な仕事を一緒にこなしてきた一番信頼できる同僚で、お互いの家をよく行き来するほどの仲だった。


「じゃあまた明日な。」
武はそれだけ言うと携帯を取り出し、
「すまない。今日は遅くなるから食事は中止にしよう。いつもいつも悪いんだが、俺の気持ちも考えてくれ。」とだけ打って朋美に送った。


返信はすぐにきた。


「もうこれで3回目じゃない。武のバカ。1人で食べるから。」


ふぅ…と武はため息をついた。武はこんなメールのやり取りにウンザリしていた。周りからはお似合いのカップルだと言われているが、武はそうは思っていなかった。



10時をまわったころ、ようやく仕事を終えた武は会社を後にした。それから「今から帰る」と朋美に送った。


家の玄関につくまで返信はなかった。やはり怒っているのだろうかと心配しながらドアを開けた。

部屋の中は真っ暗で誰もいないかのようだった。武の胸中は心配から恐怖へとかわっていた。そしてリビングへいき電気をつけたとたん武は血まみれになって倒れている朋美をみつけた。
武の頭の中は真っ白になった。



ようやく冷静になったときには、すでに警察やマスコミ、他には夜中にもかかわらず近所の人までもが集まってきていた。

武への事情聴取は朝まで続き、その間に同じ言葉を何度も繰り返した。担当は橋本という刑事だった。


橋本は朝になってようやく引き上げていったが、会社には当分行かないで家にいて欲しいと言われたので、武は会社へ連絡した。


橋本は武を疑っていた。武にもそれは分かっていた。第1発見者なのだから疑われるのは当然だと思っていた。



徹から電話があったのはその日の午後だった。


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